研究課題/領域番号 |
23650253
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
峯田 貴 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50374814)
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研究分担者 |
柿崎 育子 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80302024)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | プロテオグリカン / 分子補足 / 基板表面処理 / ナノテンプレート / ヒアルロン酸 |
研究概要 |
軟骨構成材料であるプロテオグリカン(PG)およびヒアルロン酸(HA)集合体を原子間力顕微鏡(AFM)により直接観察して分子構造を解析する手法の実現を目指し、PGおよびHA分子をチップ基板表面に規則的に分散させて捕捉・固定するテンプレートの形成手法の開発に取り組んだ。 チップ基板表面へナノドット状にPG分子を固定するために、シリコン樹脂(PDMS)製のソフトスタンプ形成手法を検討し、電子線描画によるレジストマスク形成および反応性イオンエッチングにより、シリコン基板表面に開口幅200nmで先細りのテーパー形状をもつ数1000nm深さのホールアレイを形成するプロセスを確立した。液状PDMSを埋め込んで剥離して極細柱状のソフトスタンプを試作し、柱状スタンプの直立性が良くなくモールド形状およびPDMS効果条件等の適正化を図る必要があることがわかった。また、ウエットエッチングしたシリコン基板を用いたピラミッド型ソフトスタンプ形成にも取り組み、試作したスタンプによるマイカ基板表面へのPG分子転写を検討した。PDMSスタンプ自体の溶出物の影響、荷重によるスタンプ先端の変形の影響などの課題を把握した。 サケ鼻軟骨を原料に用い、種々抽出法によるPGモノマ試料を調製し、また、集合体形成時のコアとなるヒアルロン酸分子の調製も行った。マイカ基板表面を均一にアミノシラン化する処理条件をほぼ確立し、PG分子を固定化できることを検証し、原子間力顕微鏡(AFM)観察により、枝状のGAG分子像まで鮮明に観察できることを確認した。原料および抽出法の違いによるPGコア蛋白の長さやGAG分子の様相の差異を評価できる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災による学内研究設備の被災により、露光装置、反応性イオンエッチング等の微細加工プロセス装置を修理調整して再稼働するまで長い期間を要したため、電子線描画による直接表面処理および極細柱状ソフトスタンプ形成には引き続き検討を継続していく必要があるが、学外他機関の機器も借用することにより、極細柱状ソフトスタンプのモールド形成手法までほぼ確立することができた。また、ピラミッド型ソフトスタンプ形成にも取り組み、スタンプ転写における課題を把握することができた。 PGモノマ分子およびヒアルロン酸の試料調製も実施し、全面を均一にアミノ基処理した基板表面ではPGモノマ分子を固定化できることを確認し、PG分子の原料および抽出法の違いによる分子構造の差異をAFM観察によって捉える可能性を見いだすことができた。以上のように、概ね順調な進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られた成果をもとに、基板表面へPG分子を分散・固定化するためのナノドット状の基板表面処理プロセスの完成度を向上させる。ソフトプリント法を引き続き検討するとともに、電子線描画によりアミノシラン化処理パターンをナノドット状に形成する手法についても並行して検討を進める。 コアとなるヒアルロン酸分子の補足については、薄膜ナノ電極対を用いた静電伸長による捕捉現象のメカニズム解明を進め、良好に伸長・捕捉するための条件を検討し、ナノドット表面処理した基板へ薄膜ナノ電極対の融合したナノテンプレートチップ試作に取り組む。 抽出法と調製法の異なる種々のPGモノマおよびヒアルロン酸集合体の試料について、均一な表面処理をした基板およびナノドット状の表面処理をした基板を用いた両面から捕捉実験を行い、AFM観察により捕捉した分子の分散と整列状態を評価し、本研究で開発した捕捉手法の適用性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
基板材料購入、試薬購入、スタンプ機構用部材購入などの物品費、成果発表等の出張費および学会投稿料、外部機関の機器の使用料に充てる予定である。
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