本研究は、リンパ球の抗原受容体刺激で誘発される細胞内Ca応答とその後の細胞運命(アポトーシス、増殖)を多数の細胞から取得して数値化・パターン化して、因果関係を統計的手法と数理モデルから解析することで、個々の細胞運命を予測可能なCa応答パラメターを抽出することを目的とする。 平成24年度は、A20B細胞、マウス脾臓B細胞を用いて、Ca蛍光色素(Fluo-4)を負荷し、顕微鏡下に細胞膜抗原受容体刺激後の細胞内Ca応答を細胞毎に記録して、データベースを作成した。死細胞・アポトーシス細胞を検出するために、pSIVA(IMGENEX)を培養液に添加し、アポトーシス初期に起こるフォスファティディルセリンの細胞膜外側への移行と死細胞を検出するシステムを確立することができた。蛍光情報は、画像解析ソフトAquacosmosを用いて数値化し、SPSSとSigmaplotを用いて統計解析・グラフ化を進めた。 A20B細胞においては、抗IgG抗体でBCR刺激を行うと、大部分の細胞で細胞内Caが増加するが、アポトーシスに移行する細胞の割合が極めて少なく、Ca応答のパターンとアポトーシスの相関関係を推測することは困難であった。マウス脾臓B細胞を抗 IgM抗体 + IL-4で刺激をすると細胞のブラスト化、増殖が顕微鏡下に観察できた。しかし、Fluo-4を負荷したマウス脾臓B細胞に対して、抗 IgM抗体 + IL-4で刺激すると、細胞内Caの増加は起こるが、その後の細胞のブラスト化・増殖は抑制された。Fluo-4が細胞機能に対して何らかの影響を及ぼすと推測される。Fluo-4以外の至適な蛍光色素の選択が必要と考えられる。
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