研究課題/領域番号 |
23650259
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
馬籠 信之 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (70390052)
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研究分担者 |
アグラゼ コンスタンチン 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授 (30503651)
ORLOVA Yuliya 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (90571901)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 心筋細胞 / 光スイッチング / ナノ粒子 / 細胞導入 / 光制御 / HDL / 紫外―可視 / アゾ化合物 |
研究概要 |
本申請課題においては、光応答性分子を細胞内に導入し、細胞活動を光照射によって制御することを目的とする。申請者らは、すでに心筋細胞のような興奮性を示す生体細胞において、光感受性物質を細胞外液に混在させておくことにより、照射する光の波長に依存して細胞活動に差異が生じることを見出している。この系を発展させ、光応答性物質を封入したナノサイズの微粒子を作成し、細胞内部に導入した後に光応答性物質を細胞内に放出させ、外部からの光照射によって、細胞活動を内部から制御することを試みる。 当該年度においては、微粒子の作成と、細胞への取り込みについての検討を行った。微粒子作成手法としては、Layer-by-Layer法や、無機ナノ粒子などについて検討したが、細胞内での無機物の再結晶化などの問題が生じた。このため、薬剤の取り込みと細胞導入、および、細胞内への薬剤放出が効率良く行える事が最近示されたHDL (high-density lipoprotein) を利用し、光応答性物質のHDL内への包埋と、その複合体の細胞内取り込みについて行なうこととした。 実験は、まず、物性の異なる数種類の光応答性物質と、作成しておいたHDLとを混在させ、HDL-光応答性分子の複合体形成について分光学的に検討した。また、このようにして作成した複合体を細胞培地に混ぜ、複合体の細胞内への取り込みについて調べた。複合体の細胞内導入は、あらかじめHDLに導入した蛍光物質の蛍光を共焦点顕微鏡によって観察することで確認した。 これらの結果、HDLをキャリアとすることで、光感受性物質が比較的容易に細胞内に取り込まれることが明らかとなった。生体物質由来であるHDLは細胞内で分解され、結果として光感受性物質が細胞内に停留することから、細胞外部からの光刺激によって、細胞活動が制御できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に記載したように、申請段階で計画した手法での問題点が明らかとなったものの、それに代わる手法で研究を進めることができた。このため、申請時における年次計画の初年度目標「生体適合性の高い粒子への光応答性物質の内包、ならびに、細胞内導入とその後の放出」を達成することができた。この結果により、次年度の目標である「光による細胞活動の可逆的応答」に向かって研究をスムーズに進めることが可能である。 研究そのものは最終目標に向かって着実に進んでおり、これらのことから、総合的にみて「おおむね順調」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、中途にて実験手法の改定を行ったため、予定していた海外研究者との打ち合わせなどを取りやめるなど、申請した予算計画と異なる執行となった。光応答物質の細胞内導入を確認できたので、次年度は、光照射による細胞活動の可逆的応答の実現に向けて研究を進めていく予定である。 現段階で光応答性物質の細胞内への導入と放出が確認できているので、次のステップとしては、導入後の細胞に紫外線および可視光線を照射することによる細胞活動の差異を調べる予定である。同時に、生体適合性が高く、なおかつ効率良く細胞機能制御の可能な物質の探索も行ないたい。 なお、研究代表者の所属が平成24年度から変更になるため、異動先での実験系ならびに観察系の確立をまず第一に行ない、異動先において研究を早い時期に開始させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が異動するため、まず、異動先における研究環境の構築を行う。異動先においては予備実験を中心に進め、詳細な観察や測定は異動元の備品設備を用いる予定である。このため、年度前半に、必要な試薬やその他の消耗品の購入や、簡易的な細胞培養や蛍光観察に必要な備品等の購入を行なうなどし、研究環境を整えたい。また、研究分担者の変更はないため、研究打ち合わせや、詳細な測定のために旅費を充てる。年度中盤から後半にかけては、当該年度の結果を基に、研究計画に従って研究を進める予定である。
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