年をとると皮膚の張りの低下、水晶体のにごり、動脈の硬化、骨密度が低下しないのに骨折しやすいなどの症状が現れるが、これにはコラーゲンが大きく関与している。骨を例にとれば、骨のコラーゲン線維が血糖の働きで非酵素的なメイラード反応を起こした結果、糖化され、糖化最終産物(AGE)を産生する。AGEはコラーゲン分子間の架橋となり、コラーゲンの機械的特性を変化させる。またAGEは蛍光を強く発する。またコラーゲンは2次の非線形光学感受率が高いので、パルスレーザー光によって第二高調波発生光(SHG 光)が発生する。したがって蛍光計測とSHG光計測を利用すれば老化のモニターとなる。 SHG光計測においては、ヒト真皮コラーゲン分布を計測した。若年から中年にいたる各年代のボランティアを募り、頬のコラーゲン分布画像を取得比較した結果、年齢とともにコラーゲンからのSHG信号が弱くなることを観測した。また蛍光も同時に計測し、エラスチンとコラーゲンの比を求めた。しかし、皮膚においては、in ivo計測によるAGE蛍光強度と加齢との相関はまだ見出せていない。 歯についても計測を始めたが、象牙質のSHG信号には顕著な年齢差が見られなかった。歯では機械特性ならびにAGEをターゲットとした蛍光強度に、年齢による差が見出された。ただし、通常の歯切片はハイドロオキシアパタイトの影響が大きく、コラーゲンの硬さと蛍光が特定できないためこれを脱灰によって取り除き、コラーゲンを露出することで所期の計測を実施した。以上の結果をもとに、平成25-26年度の挑戦萌芽研究を計画し、採択された。
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