研究課題/領域番号 |
23650261
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 成生 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70240546)
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研究分担者 |
中村 匡徳 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
福島 修一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40362644)
越山 顕一朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80467513)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 生体光計測 / SHG / 血管 / リモデリング / コラーゲン |
研究概要 |
ホルマリン固定した家兎大動脈を用いてSHG顕微鏡観察を行った.SHGには,Cr:Frレーザ(CrF-65P, Avesta Project)を光源とした使用した.実験では,偏光方向を一方向に定め,60倍油浸対物レンズを用いて試料を観察し,600x600um, 256x256pixcelのBitmap形式のグレースケール画像を血管表面から深さ180umまで10um間隔で取得した.血管表面から取得したグレースケール画像では輝度値の分布が存在した.また,血管表面から深さ方向の連続断層画像においても輝度値の分布が存在することが確認できた.しかし,測定深さが70umより深くなると取得画像内の輝度値の大きさや輝度値の存在する領域がともに小さくなり始め,測定深さが130umより深くなると十分な精度で検知するのが困難であった.血管表面近傍における計測画像で輝度値の分布が観察されたことから,本手法によりコラーゲン分子の存在を検知できることが分かった.また,各コラーゲン分子が照射したレーザの偏光方向に整列しているとき,発生する第2高調波が強くなるため,取得した画像内で大きな輝度値を持つ領域はレーザの偏光角度に近い配向角度を持つコラーゲン分子が多いことが分かった.このことから,一つの試料に対してレーザの偏光角度を変更して計測することでコラーゲンの詳細な配向情報を取得できることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたSHG 法による血管組織観察手法の確立はほぼ終えることができたが,血管壁深部の3次元コラーゲン構造を計測するための計測条件や試料の作成方法の検討に時間を要した.このため,力学的負荷に対する血管壁のリモデリングの解明につなげるための血管形状や部位によるコラーゲン構造の違いに関する検討や高血圧中の血管壁組織変性イメージングを十分に行うことができなかったが,計測方法は確立したので,次年度に計画の遅れを取り戻すことは可能である.
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今後の研究の推進方策 |
今回の実験で明らかとなった問題点は,測定深さが80umを超えたときに,画面内の輝度値の大きさと輝度値の存在する領域が減少し,十分な情報が得られなくなることである.この原因には,測定深さが深くなるにつれてコラーゲンの量が減少した可能性と,SHG顕微鏡が測定できる深さの限界に達した可能性がある.今後は,X線CT計測や染色法を用いて血管壁深部でのコラーゲンの量や配向を調べることで,これらの原因を判断しながら,血管壁におけるコラーゲンの3次元の配向を解析できるようにしていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
SHG計測に関しては手法および装置ともほぼ完成している状況であるので,その計測結果を検証するため装置や試料の作成,および力学的負荷に対する血管壁のリモデリングの解明につなげるための動物実験に研究費を使用する予定である.また,得られた研究成果を発表するための経費にも使用する.
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