研究課題/領域番号 |
23650261
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 成生 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70240546)
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研究分担者 |
中村 匡徳 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20448046)
福島 修一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40362644)
越山 顕一朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80467513)
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キーワード | バイオメカニクス / 生体光計測 / SHG / 血管 / リモデリング / コラーゲン / 計算力学解析 |
研究概要 |
本年度はまず,血管壁内のコラーゲンの配向状態を観測するためのSHG画像取得の高速化と定量的な評価手法の確立を行った.従来のSHG顕微鏡では入射光の偏光を波長板で機械的に制御していたため測定時間が長いという問題があった.そこで,電気光学変調器を用いてSHG観測の高速化を実現した.測定時間は従来法の1/10程度まで改善され,画像構成アルゴリズムの改良も行ったことより,in vivo計測における体動による誤差がないSHG画像の取得に成功した.さらに,評価指標として配向ベクトルを定義し,従来の光学顕微鏡では可視化ができないサブミクロンスケールのコラーゲン構造の定量解析が可能となった. 次に,病理解剖により摘出されたヒト脳動脈瘤の病理組織標本(ヘマトキシリン・エオジン染色およびアザン染色)を作製し,動脈瘤壁の中でのコラーゲンの配向状況を調べた.その結果,動脈瘤のネック部でコラーゲンの配向が乱れ,ところどころで線維が不連続となっていることが観察された. さらに,動脈瘤内の力学場を明らかにするため,臨床で得られた動脈瘤を有するヒト脳血管のCT画像から様々な動脈瘤の実形状モデルを構築し,壁の応力解析および瘤内の血流解析を行った.その結果,動脈瘤のネック部では,主応力およびミーゼス応力とも変化が大きく,また,血圧による等方引張変形だけでなく,比較的大きなせん断変形も生じていることがわかった.また,動脈瘤のネック部では血流が乱され,他の部位より大きな壁せん断応力が作用することがわかった.こうした壁に作用する応力場が,組織のリモデリングによる複雑なコラーゲンの配向を引き起こしている可能性が示唆された. 以上の結果から,血管内視鏡でSHGによるコラーゲン配向の計測が可能になると,医用画像に基づく計算力学解析とを組み合わせることにより,臨床において脳動脈瘤の進行予測が可能になるのではないかと考える.
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