研究課題/領域番号 |
23650263
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡 久雄 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (80116441)
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研究分担者 |
岡本 基 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (80144757)
北脇 知己 岡山大学, 保健学研究科, 助教 (40362959)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 生物・生体工学 / 医療・福祉 / 筋音図 / 筋電位 / MMG |
研究概要 |
ヒト骨格筋を伝達システムと考えると,スポーツや臨床医学で広く用いられる筋電位信号(EMG)は筋を収縮させる入力信号,筋が収縮した際に発せられる筋音信号(MMG)は筋自身の収縮機能を反映する出力信号と考えられ,本来,筋収縮機能を評価するためには,入力であるEMGと,出力であるMMGを同時に計測・評価しなければならない。本研究の目的は,EMGとMMGを同時測定するために,(1)身体の不随意な動きに影響されない光反射型変位MMGセンサに,EMG電極を付加した筋収縮ハイブリッドセンサ(MMG/EMG一体型センサ)を開発し,(2)動作中でも測定できるよう,センサをワイヤレス化したシステムを構築することである。さらに,(3)同時計測されたMMGとEMGから求められる電気機械結合効率に基づく筋収縮機能評価指標を新たに提案する。平成23年度は,(1)フォトリフレクタ変位MMGセンサに,EMG電極を付加して一体化した筋収縮ハイブリッドセンサを開発し,また(2)センサをワイヤレス化したシステムを構築した。本センサは幅30mm,高さ10mmで,フォトリフレクタによる変位筋音信号と,Ag-AgCl電極2個による筋電位信号の計測が可能である。ハイブリッドセンサは約10cm離れたワイヤレスロガーモジュールに接続され,サンプリング周波数1kHzでサンプリングされた後,無線送信される。センサの周波数特性(振幅,位相)はほぼ100Hzまで良好で,外乱として衝撃ノイズを与えた場合でもその出力には全く影響がなかった。リフレクタのDaylight blocking filterは有効に働き,遮光下と室内光下での出力の相関係数は0.9994であった。暗電流や回路ノイズに対するS/Nのゆえに分解能は100μmが限界であった。本研究の遂行に当たって,研究分担者(岡本基,北脇知己:岡山大学),並びに連携研究者と協力して実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,フォトリフレクタ変位MMGセンサにEMG電極を付加して一体化した筋収縮ハイブリッドセンサを開発し,またセンサをワイヤレス化したシステムを構築した。本センサはフォトリフレクタによる変位筋音信号と,Ag-AgCl電極2個による筋電位信号の計測が可能であり,交付申請書に記載した当該年度の研究目的はほぼ達成できた。しかし,暗電流や回路ノイズに対するS/Nのゆえに,分解能は100μmが限界であった。身体の不随意な動きに影響を受けず,動作中でも測定することを考えると,さらに分解能が必要であるが,今後,回路技術等によって改善できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は本研究課題の最終年度となるが,平成23年度に得られた結果を基にして,以下の研究を行う予定である。(1)同時計測されたMMGとEMGから求められる電気機械結合効率に基づく筋収縮機能評価指標の新規提案:本システムによって得られるMMGとEMG両信号から電気機械結合効率を算出し,トータルとして筋の収縮機能が評価できるような筋収縮機能評価指数を新たに提案する。両信号の振幅比だけでなく,MPF比についても検討を行う。(2)スポーツ科学分野などへの応用:スポーツトレーニングやランニング等を実施し,トレーニング効果や筋疲労評価における筋収縮機能評価指数の有効性を検討する。さらに,本指標を筋疾患症や長期不活による廃用性筋委縮の評価等の医療・福祉分野に適用する際にどのような問題があるか詳細に検討して,本研究を完了する。また,得られた結果を取りまとめ,研究成果の発表を行う。本研究の推進にあたり,神経生理学を専門とする研究分担者(岡本基:岡山大学・保健学研究科),および医用生体工学を専門とする研究分担者(北脇知己:岡山大学・保健学研究科),並びに連携研究者(小西有人:岡山大学・保健学研究科・特別契約職員,ハイブリッドセンサおよびワイヤレスシステムの構築,実験データの採取を担当)と協力して実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,(1)同時計測されたMMGとEMGから求められる電気機械結合効率に基づく筋収縮機能評価指標の新規提案,(2)スポーツ科学分野などへの応用を行って本研究を完了するが,平成23年度にはMMG/EMG一体型ハイブリッドセンサの分解能向上のための回路試作が年度内に執行できず,¥90,454の繰越額が生じた。平成24年度は,繰越額および本年度請求額も合せて,残された本課題を優先して取り組み,上記研究課題を遂行するために,電子部品やEMG電極などの消耗品,国内旅費,被験者への謝金,研究分担者への配分等に充てる。
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