研究課題/領域番号 |
23650265
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
鈴木 桂輔 香川大学, 工学部, 准教授 (80373067)
|
研究分担者 |
丸茂 喜高 日本大学, 生産工学部, 講師 (00409088)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 脳機能解析 / 心電のゆらぎ解析 / 温感刺激 / 聴覚刺激 |
研究概要 |
本研究では,脳内の酸素化ヘモグロビン濃度と,心電のゆらぎ分析に基づく自律神経活動の定量値から,癒し感を定量化し,この癒し感を実現するための,嗅覚刺激,温感刺激,聴覚刺激の提示方法を提案し,病院や高齢者の入寮施設などの臨床の現場での,五感の刺激による癒しの体感による,QOLの向上方策について,実験的に分析する. 平成23年度では,まず,脳機能および自律神経活動の観点で,癒し感を定量化する手法を提案し,その精度について分析した.この分析では,酸素化ヘモグロビン濃度の変化量と微分値を二次元の座標系において時系列でプロットした軌跡の重心点からの距離を評価指標として,酸素化ヘモグロビン濃度のゆらぎを定量化し,癒し感や脳機能の賦活の程度を推定する手法を提案した.ついで,温感刺激および,聴覚刺激(音楽療法)の有効性について,被験者10名を対象に,室内実験による基礎的な分析を実施した.この分析では,それぞれの刺激を個別に提示した場合の効果について,上記の酸素化ヘモグロビンのゆらぎを定量的に表現する手法と,心電の間隔(RRI)のゆらぎ量から交感神経と副交感神経の活動レベルを定量化する手法に基づき,癒し感および脳機能の賦活の程度を定量化した. 以上の分析の結果,例えば,聴覚刺激(音楽療法)の場合では,被験者の嗜好(好み)に合った疾走感のある曲を歌唱することより,交感神経を,一度優位にした後に,その曲を聴く状態を設定することにより,副交感神経を優位にする状態を誘導すると,歌唱した後に,レスト(安静状態)を設定する場合と比較して,優位に脳機能が賦活し,同時に癒し感を体感できることを示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の主な作業課題は、「癒し感」を定量化する手法の手案および,その精度についての検証であった。脳内の酸素化ヘモグロビンの濃度変化と、心電のゆらぎ解析の結果から、先行研究を基に、被験者の心理状態を推定する手法の提案および検証を実施した。当初予定していた実験は、実施できているため、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、平成23年度に提案および推定精度の検証を実施した、癒し感の評価指標を用いて、聴覚刺激(音楽療法)および嗅覚刺激による、癒し感の創出手法を提案する。ここでは、個人個人の聴覚刺激(音楽療法)や嗅覚刺激(香り)に対する嗜好性やメンタルモデル(ある感覚刺激を受けると,特定の状況を連想する)に適合し,かつ,慣れによる感覚刺激の低減を抑制できる嗅覚や聴覚刺激の手法を提案する。従来、個人個人のメンタルモデルを考慮した、癒し感の創出手法の提案は、その効果を向上させるうえで必要であると報告されていたものの、具体的な実現方法についての報告例が極めて少なく、新たなチャレンジである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外出張については、以下を予定している。研究成果の海外学会発表として、人間工学会・日韓合同シンポジウム(2012年5月)において発表を行い、情報収集として、この分野の研究に従事する研究者の多い、人間工学会、欧州年次大会(HFES-Europe,Annual Meeting、2012年10月)に参加する。 国内出張については、研究成果の国内学会発表として、人間工学会・中四国支部大会(2012年12月)に参加し、研究打合せとして、高松⇔東京(6人日)、高松⇔名古屋(6人日)を予定している。 謝金謝金については、被験者参加費(延50/人日)および、研究補助学生アルバイト雇用費(1 人×2ヶ月)を予定している。 設備備品の購入については、脳内酸素濃度分析用ソフトウェアの購入を予定している。
|