研究課題/領域番号 |
23650266
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
新留 琢郎 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (20264210)
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キーワード | オーバーハウザー効果MRI / 電子スピン共鳴 / デンドリマー / ニトロキシラジカル / プロテアーゼ / 腫瘍 / ペプチド |
研究概要 |
オーバーハウザー効果MRI(OMRI)は電子スピンからプロトンへのエネルギー遷移により核磁気共鳴信号を数十~数百倍にも増強する新しい画像診断法である。23年度は腫瘍に集積する性質を持つ枝分かれ状高分子(デンドリマー)にOMRIの造影剤となるニトロキシラジカル基を、ペプチド(腫瘍特異的に発現しているプロテアーゼの基質となる)を介して修飾した分子を構築した。これにプロテアーゼを作用させるとニトロキシラジカル基の電子スピン共鳴(ESR)スペクトルが大きく変化し、OMRIにおいて、腫瘍を選択的に造影できることを示した。 本年度はまずそのニトロキシラジカル基について、従来利用していたテトラメチルを有するニトロキシラジカル(TEMPO)基を、より生体内で安定に存在するテトラエチル基を有するニトロキシラジカル(TEMPO)基に変えることを試みた。テトラエチル体はラジカル部分が周囲のエチル基によって遮蔽されているため、還元剤や酸化剤から守られており、血中においても数時間の半減期をもつ誘導体である。まず、この誘導体の化学合成からはじめ、それをデンドリマー分子に修飾した。その結果、血中においても明確なESRスペクトルを長時間維持することがわかった。さらに、プロテアーゼの基質となるペプチドを介して、このテトラエチル体の修飾にも成功したが、得られる化合物の量が極めて少なく、実際のプロテアーゼ処理後のESRスペクトル変化の解析には至らなかった。目的化合物の収量が少なかった理由として、その合成戦略に問題があることがわかり、改善が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、プロテアーゼを作用させた際の大きなESRスペクトルの変化を観察し、また、安定性の高いニトロキシラジカル誘導体の有効性を明らかにした。これら両者を併せ持つ化合物の設計にも目処がついてきた。一方で、研究代表者は平成24年12月に熊本大学へ異動となった。その前後で研究の進捗が止まり、全体的に研究の進行は遅れてしまったが、25年度に挽回したい。
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今後の研究の推進方策 |
安定性の高いニトロキシラジカル誘導体と基質ペプチドを修飾したデンドリマー分子を合成し、プロテアーゼに対する応答性や、さらに、動物実験においてその有効性を評価する。そして、本研究提案の最終目的であるOMRI造影剤を提案したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述した実験に合成用試薬、分析試薬、動物実験に関する消耗品を物品費として使用し、また、実験補助者に対する謝金、また、研究成果発表のための出張旅費に利用する予定である。
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