研究課題/領域番号 |
23650268
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
玉川 雅章 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (80227264)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 血栓 / 血液流れ / せん断流れ / 血小板活性化 / 医用流体機器 |
研究概要 |
計画は(A)血小板に作用するせん断応力(一定せん断応力)による血小板変形挙動と活性化機能変化と(B)機能変化(活性化)に基づく血栓予測モデルの作成,の2つのステップで行う.平成23年度には一定せん断応力を作用する回転流路内観察装置の製作を,平成24年度には分析に時間を要するそれぞれの蛍光標識変化からの機能変化(活性化指標)を割り出すことや数理モデルの確立を目標としている.平成23年度においては,一定せん断応力下による血小板の観察を大きな目標としており以下の2つを行った.(1)一定せん断応力の発生装置として2重円筒式の流路観察に適する装置の製作を行った.中心部の速度0(ゼロ)領域となるクエット流れを作る.なお,本段階の観察装置の開発の際に予想される問題として,回転数をせん断速度が最小1(1/s)から最大1000(1/s)程度のため,流れの不安定がおきる可能性がある.(2)直接撮影した映像を特に血小板を中心とした変形挙動の解析を画像処理でおこない,2次元面上での変形やひずみを算出する. これらの内容に対する結果としては以下のようになった.(1)血小板変形挙動のための観察装置として,回転粘度計を改良して,流路部を設計・製作し,そのクエット流れの確立を目指しているが,回転軸と幾何的中心軸のずれなどの工作精度による流れの安定化が年度末の時点では達成できていない.したがって,継続的に改良・製作を進めているところである.(2)(1)のクエット流れの安定した確立が達成できていないため,顕微鏡下で2次元セル流路を製作し,その中での血小板の観察を行っい,非常に微弱な発光のためわずかな値ではあるが,検知することができていることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 回転粘度計の改良による二重円筒流れの製作を行ってきたが,工作精度による軸と幾何的中心のずれにより,安定したクエット流れとなっていない.したがって,平成23年度の実験装置製作の目標である安定した速度0領域のクエット流れの完全な確立がなされていないことが,到達度の低い主な理由である.成果概要でも述べたが,研究計画段階でもこの工作精度による問題はある程度予測されていたため,この二重円筒流れ観察装置の改良は設計・製作の所要時間を考慮に入れて進めつつ,ミクロ系での血小板の観察系の確立を,計画を前倒しで進行させた.この点を加味して,"(3)やや遅れている"とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進すべき点として,(1)前年不十分であったクエット流れの観察装置の改良を進める,(2)血小板自身を緑色蛍光で標識させるメパクリンで染色して装置内流路に入れる.(3)装置にせん断応力が生成され,血小板が活性化すると流路内に分散させたカルシウム感受性発光タンパク(エクオリン)を用いてその発光強度を調べることで,活性化の度合いを調べる.(4)その後,血栓形成予測CFDに用いる血小板の活性化モデルの構築を,この発光量の観察によって行う.を中心として研究を推進する.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度からの二重円筒流れ流路を利用したクエット流れを確立するために,血小板活性化のうちのカルシウムイオンを完治するイクリオンによる蛍光観察を中心としたもの,すなわち,波長の固定したレーザを用いることによる観察に絞り込み,設備備品をチューナブルレーザ購入を中止し,材料費や製作費などの消耗品等に置き換える.この点が,経費使用の大きな変更点となる.
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