研究概要 |
我が国における心疾患の死亡率は非常に高く、現在、癌に次いで第二位となっている。多くの心疾患は進行性をともなうため、患者のQOLと延命を改善するためには、早期に発見し、投薬治療を出来る限り早い段階で行うことが求められる。ところが、臨床で現在使用されている診断装置(X線-CT、MRI、超音波など)は精度が十分でないため、心疾患早期の段階で生じる心筋細胞内の微小な機能・構造異常を捉えることができない。本研究において申請者らは、心臓ナノ医学(Cardiac Nanomedicine)を創成することを目的とし、nm精度で病態診断や治療効果の判定を可能にする新しい技術の開発を行った。まず、ラットの幼若心筋細胞を用い、収縮構造の最小単位であるサルコメアのZ線にAcGFPを発現させ、収縮構造の最小単位であるサルコメアの動態解析を行った。その結果、3 nm(カメラ速度:50 fps)の計測精度でサルコメアの動的挙動を計測できるシステムを構築することに成功した(サルコメア長ナノ計測:Shintani et al., 2014)。これは、Gアクチン一分子の直径(5 nm)よりも小さな値であり、世界最高のサルコメア長計測精度である。また、サルコメア長ナノ計測をマウス個体の心臓に応用し、心筋細胞一個の興奮・収縮情報(サルコメア長、Ca濃度)を、高時間(10 ms)・空間(20 nm)分解能でイメージングできる技術を開発した(論文作成中)。さらに、これらの技術を拡張型心筋症モデルマウスに応用し、心臓の内因性調節機構(Frank-Starling機構)が減弱しているメカニズムを分子レベルで解き明かすことに成功した(Inoue et al., 2013; Kobirumaki-Shimozawa et al., 2014)。これらの成果に基づいて、今後、心疾患を超早期に診断することのできる装置の基盤技術を開発する。
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