研究課題/領域番号 |
23650276
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
丸田 晋策 創価大学, 工学部, 教授 (40231732)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ナノバイオロジー / ナノメディスン |
研究概要 |
キネシンEg5は、細胞の有糸分裂を担うATP駆動型のモーター蛋白である。細胞周期のM期の進行においてEg5は細胞有糸分裂の重要な役割を担っている。がん細胞ではEg5が過剰発現して著しく細胞増殖が進行する。Eg5のATPase活性を特異的に阻害するMonastrolやSTLCは、Eg5による有糸分裂を停止させて、ガン細胞の増殖を抑えることによりアポトーシスを誘導することが示されており、抗がん剤として注目されている。しかしながら、これらの抗ガン剤は正常細胞のEg5も阻害することから副作用の問題がある。目的の部位で特異的に、必要な時にだけ作用する副作用が少ない抗ガン剤が必要となる。そこで本研究計画では、異なる波長の光で可逆的に活性が制御できる光スイッチ機構をもつ抗ガン剤・キネシンEg5阻害剤を開発することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 光応答性Eg5阻害剤の合成と分光学的性質の解析 Phenylazobenzoic-maleimideとN-acetyl-cysteinをカップリングすることにより、光応答性のSTLCアナログ、Phenylazomaleimide-Cystein (PAM-Cys)の合成を行った。そして光異性化に要する光照射時間と各異性体の安定性について実験を行い、光異性化の最適条件を決定した。2. 光応答性Eg5阻害剤PAM-CysによるEg5の光可逆的阻害 紫外線照射を行いcis型に異性化したPAM-Cys存在下で、Eg5の微小管依存性ATPase活性は70%まで阻害された。そして同様に可視光線照射でtrans型にしたPAM-Cysでは、55%までATPase活性が阻害された。また、cis型になったものに可視光線を照射してtrans型にすると活性は70%まで回復することから、PAM-Cysの光異性化に伴い活性阻害効果が変化していることが明らかになった。このように、フォトクロミック阻害剤PAM-Cysを用いて、光可逆的にEg5の微小管依存性ATPase活性を制御することができた。
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今後の研究の推進方策 |
光可逆的微小管滑り運動活性の阻害Eg5 の ATPase 活性を光可逆的 Eg5 阻害する化合物を用いて、Eg5 による微小管の滑り運動に対 する阻害効果を調べる。申請者の研究室で確立している In vitro motility assay 法に従って Eg5 を吸着させたスライドガラス上を蛍光標識した微小管が滑る様子を光可逆的 Eg5 阻害存在下で観 察する。 光可逆的キネシン運動制御の一分子計測光可逆的に微小管滑り運動速度が変化する化合物に関しては、微小管上を運動する一分子の Eg5 の運動を一分子計測装置を用いて解析を行う。光ピンセット法により光応答性阻害剤が Eg5 の力 発生に及ぼす影響を測定する。このことにより、Eg5が有糸分裂時に行っている微小管の輸送に及 ぼす効果を見ることができる。一分子計測は日大(物理)茶圓茂教授の装置を利用して解析を行う。 この装置を利用するための承諾は既に得ており、また過去に従来型キネシンの研究において利用 しており具体的な経験と実績がある。 細胞分裂の光可逆的阻害Eg5 の ATPase 活性と Eg5-微小管滑り運動活性を光可逆的に効率良く阻害する光応答性阻害剤に ついて、培養細胞を用いて細胞分裂阻害実験を試みる。申請者の所属する研究施設には"神経幹 細胞の in vitro での細胞系譜に関する研究"を展開している細胞研究の専門家・山之端准教授が 所属しており具体的に培養細胞を用いた実験を行うための設備を利用することが可能である。既 に具体的な方法についてアドバイスを受けている状況である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は次の通りである。基本的に23年度と基本的に同じように消耗品購入に使用する予定である。生化学・遺伝子工学用試薬: 生化学的試薬と遺伝子工学および蛋白質の大腸菌発現用試薬は本研 究計画で使用するキネシン Eg5 を調製するために必用である。有機合成用試薬:生体分子機械に導入するフォトクロミック化合物を合成するために必用である。 クロマト樹脂・HPLC カラム:
Ni-NTA アフィニティー・クロマトは、大腸菌で発現させた His-Tag キネシン Eg5 を精製するために必用である。またフォトクロミック化合物の精製に DEAE イオン交 換クロマト用の樹脂を必用とする。フォトクロミック ATP アナロ グを合成するための、合成中間体であるアゾベンゼンとスピロピランの誘導体を精製するために 逆相クロマトカラムを用いた HPLC は必須である。ガラス製品・プラスティク製品: 有機合成用のガラス製品、およびピペッター用のチップなど全 般的にすべての実験計画で必要とするプラスティク製品を購入する予定である。
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