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2012 年度 実施状況報告書

光可逆的活性を示すフォトクロミック抗ガン剤・キネシンEg5阻害剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23650276
研究機関創価大学

研究代表者

丸田 晋策  創価大学, 工学部, 教授 (40231732)

キーワードナノバイオロジー / ナノメディスン
研究概要

キネシンEg5は、細胞の有糸分裂を担うATP駆動型のモーター蛋白である。がん細胞ではEg5が過剰発現して著しく細胞増殖が進行する。Eg5活性を特異的に阻害するMonastrolやSTLCはガン細胞の増殖を抑えることによりアポトーシスを誘導することから、抗がん剤として注目されている。しかしながら、これらの抗ガン剤は正常細胞のEg5も阻害することから副作用の問題がある。目的の部位で特異的に、必要な時にだけ作用する副作用が少ない抗ガン剤が必要となる。そこで本研究計画では、異なる波長の光で可逆的に活性が制御できる光スイッチ機構をもつ抗ガン剤・キネシンEg5阻害剤を開発することを試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. 光応答性Eg5阻害剤STLCアナログの合成と分光学的性質の解析
4,4'-diamino-azobenzeneとTrityl-glycineをカップリングすることにより、光応答性のSTLCアナログ、4,4'-ditritylglycyl-azobenzene(DTG-AB)の合成を行った。そして光異性化に要する光照射時間と各異性体の安定性について実験を行い、光異性化の最適条件を決定した。面白いことにTrans 型よりcis型の異性体が安定であることが明らかになった。
2. 光応答性Eg5阻害剤STLCアナログによるEg5の光可逆的阻害
DTG-ABによりEg5の微小管依存性と微小管非依存性ATPase活性はDTG-ABの濃度に依存して阻害されることが示された。そしてCis-Tran光異性化により微小管非依存性ATPase活性に対する阻害効果が光可逆的に変化することが示された。これに対して、微小管存在下におけるEg5-ATPase活性は光異性化による阻害効果の差は見られなかった。また、ストップドフローを用いた解析によりDTG-ABは微小管非存在下ではATPの結合には影響を与えていないことが示された。

今後の研究の推進方策

1. 光可逆的阻害の速度論的解析
光応答性のSTLCアナログ、4,4'-ditritylglycyl-azobenzene(DTG-AB)がEg5のATP加水分解サイクルのどのステップを光可逆的に阻害しているか明らかにするために、蛍光標識したATPアナログ,Mant-ATPを利用してStopped Flow 装置による速度論的解析を行う。
2. 光可逆的キネシン運動制御の一分子計測
H24年度の研究で合成することに成功したDTG-ABで誘導されるEg5の微小管上の運動を一分子計測装置を用いて解 析する。光ピンセット法により光応答性阻害剤が Eg5 の力 発生に及ぼす影響を測定する。このことにより、Eg5が有糸分裂時に行 っている微小管の輸送に及 ぼす効果を見ることができる。一分子計測は日大(物理)茶圓茂教授の装置を利用して解析を行う。 この装 置を利用するための承諾は既に得ており、また過去に従来型キネシンの研究において利用 しており具体的な経験と実績がある。
3. 細胞分裂の光可逆的阻害
DTG-ABを用いて培養細胞を用いて細胞分裂 阻害実験を試みる。申請者の所属する研究施設には”神経幹 細胞の in vitro での細胞系譜に関する研究”を展開している細胞研究 の専門家・山之端准教授が 所属しており具体的に培養細胞を用いた実験を行うための設備を利用することが可能である。既 に具体的 な方法についてアドバイスを受けている状況である。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費の使用計画は次の通りである。基本的にH24年度と同様に試薬等の消耗品購入に使用する予定である。
生化学・遺伝子工学用試薬: 生化学的試薬と遺伝子工学および蛋白質の大腸菌発現用試薬は本研 究計画で使用するキネシン Eg5 を調 製するために必用である。
有機合成用試薬:生体分子機械に導入するフォトクロミック化合物を合成するために必用である。
クロマト樹脂: Ni-NTA アフィニティークロマト樹脂は、大腸菌で発現させた His-Tag キネシン Eg5 を精製する ために必用である。またフォトクロミック化合物の精製に DEAE イオン交 換クロマト用の樹脂を必用とする。フォトクロミック ATP アナロ グを合成するための、合成中間体であるアゾベンゼンとスピロピランの誘導体を精製するために 逆相クロマトカラムを用いたHPLC は必須である。
ガラス製品・プラスティク製品: 有機合成用のガラス製品、およびピペッター用のチップなど全 般的にすべての実験計画で必要とす るプラスティク製品を購入する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] フォトクロミック阻害剤を用いた有糸分裂キネシンEg5の光制御

    • 著者名/発表者名
      Kumiko ISHIKAWA, Hideo SEO, Kanako TOUYAMA and Shinsaku MARUTA
    • 学会等名
      第50回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      名古屋大学 東山キャンパス
  • [学会発表] キネシンEg5 に対するフォトクロミック阻害剤を用いた細胞分裂の光制御

    • 著者名/発表者名
      Kei SADAKANE, Kumiko ISHIKAWA, Hideo SEO, Banri YAMANOHA, and Shinsaku MARUTA
    • 学会等名
      第50回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      名古屋大学 東山キャンパス
  • [学会発表] フォトクロミック阻害剤を用いた有糸分裂キネシンEg5およびKif18aの光制御

    • 著者名/発表者名
      石川 久美子, 瀬尾 英雄, 當山 奏子, Balamurugan Subramaniam, Guan-Yeow Yeap, 丸田 晋策
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場
  • [学会発表] Photo‐regulation of cell division using photochromic inhibitors for kinesin Eg5

    • 著者名/発表者名
      Kei SADAKANE, Kumiko ISHIKAWA, Hideo SEO, Kanako TOHYAMA, Banri YAMANOHA and Shinsaku MARUTA
    • 学会等名
      American Biophysical Society 57th Annual Meeting
    • 発表場所
      Philadelphia, PA USA
  • [学会発表] Synthesis of novel photochromic inhibitors of mitotic kinesins Eg5 and kif18a and their phtoresponsive interaction with the kinesins

    • 著者名/発表者名
      Kumiko ISHIKAWA, Hideo SEO, Kanako TOUYAMA, Subramaniam BALAMURUGAN, Guan Yeow YEAP and Shinsaku MARUTA
    • 学会等名
      American Biophysical Society 57th Annual Meeting
    • 発表場所
      Philadelphia, PA USA

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公開日: 2014-07-24  

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