研究課題/領域番号 |
23650284
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岸田 晶夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (60224929)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 濃厚ブラシ表面 / リビングラジカル重合 / 金属酸化膜 / ナノ構造 |
研究概要 |
超高感度バイオセンサー表面を形成するために、金属相とタンパク質などの有機材料との分子-原子距離を極限まで短くする方法論を提案している。具体的には金属表面に密度を調整したポリマーブラシを形成し、その間隙に電析を行ってメタルブラシを形成する。メタルブラシ-界面(タンパク質)間の高効率情報交換により、新しいセンサー材料の開発が可能になると期待できる。今年度の実績は以下の通りである。1 ポリマーブラシと金属酸化被膜の作製方法と特性評価について:まず、ポリマー・金属ハイブリッド作製に適切な金属とポリマーを決定した。酸化皮膜の作製の容易さおよび制御のしやすさからチタンを選択した。また、重合の容易さとブラシ層について多くの知見が集積されているハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を選択した。チタン酸化被膜形成条件を調べ、酸化被膜の膜厚調整条件を決定した。評価を原子間力顕微鏡(AFM)、エリプソメーターを用いて検討し、金属薄膜形成条件の最適化を行った。次に金属表面に開始剤をシランカップリングで固定させ、ATRP反応を利用し、ポリHEMAブラシを作製した。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)、AFM、エリプソメーター、静的接触角測定器を用いて、分子鎖の密度、厚さ、表面特性を測定した。両者の検討の後、ポリマーブラシの厚さに合わせて、種々の金属酸化被膜を作製し、表面のハイブリッド化を行った表面を調製した。XPSやAFM測定により目的の表面が得られたと推測された。2 ポリマー・金属ハイブリッドブラシ作製方法の確立について:上記から得られた結果に基づき、ポリマーと金属のハイブリッドブラシを作成する条件を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属酸化物との複合化を行うことができた。これを元に、目的とする金属とのハイブリッド化を検討しているが、金属との複合化の際のポリマー鎖の安定性について、慎重な検討が必要なため、おおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして、ポリマー・金属ハイブリッドブラシ界面の基礎研究を行う。安定にポリマー・金属ハイブリッドブラシを得られる条件を探索し、ブラシの密度とグラフト鎖長の観点から、ゆらぎと物性・機能との相関について明らかにする。偏光解析、NMR、AFM、エリプソメトリー法による高精度な解析を行い、系統的な研究を展開する。 濃厚ブラシのグラフト密度PHEMAを更に向上させるための合成技術の確立を行い、グラフト密度および鎖長を変え、濃厚ブラシ(濃厚溶液状態)が固体状態に変化する臨界点を予想する。希薄、準希薄、濃厚、固相化ポリマーブラシを作製し、電気伝導性、偏光性などの解析から運動性の低下について調べる。また、架橋による固相化も行い、架橋度との関係についても併せて検討する。温度、イオン強度、pH変化に伴う膨潤・脱膨潤挙動をAFM、エリプソメトリー測定などにより検討し、グラフト密度との相関を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に備品としてポテンシオスタットを購入する計画であったが、酸化膜ハイブリッドブラシおよび金属ハイブリッドブラシの調製のための条件設定に多くの時間と試薬等を投入したため、購入に至らなかった。また、多くの試薬類を購入したが、ポテンシオスタットの金額には至らず、次年度に使用する額が生じた。ポテンシオスタットについては、自作の簡易装置で対応し、引き続き安定したポリマー金属ハイブリッド表面が得られる条件について探索を進め、平成24年度計画の内容の研究を推進する。
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