超高感度バイオセンサー表面を形成するために、金属相とタンパク質などの有機材料との分子-原子距離を極限まで短くする方法論について検討している今年度の実績は以下の通りである。 1)ポリマーブラシと金属酸化被膜の作製方法と特性評価について:昨年度に引き続きポリマー・金属ハイブリッド作製を行った。チタン表面に安定に酸化皮膜層を形成する条件について検討を行った。濃厚ブラシ層の膜厚(平滑性)がのちの電気的処理に大きく影響することが予想されたため、チタン表面の平滑面形成について精緻な制御を試みた。金属表面にリビングラジカル重合法であるATRP反応を利用しポリHEMAブラシを作製した。特に形成されたブラシ層の膜厚均一性について精密な制御を試みつつブラシ層形成を行った。両者の検討の後、種々の金属酸化被膜の作製を行い、金属酸化物とポリマーのハイブリッド化表面を調製した。XPSやAFM測定により、酸化物とポリマーの混合層を有する表面が得られたと推測されたが、ブラシ層の密度や厚さによるハイブリッド層形成については、安定した成果が得られなかった。昨年度までの結果より酸化層形成の際の積層のエネルギーが大きいことが判明しているため、電流値などをできるだけ低値に設定したが、目標とするような安定的な成果を得ることは困難であった。 2)ポリマー・金属ハイブリッドブラシ作製方法の確立について:上記から得られた結果に基づき、ポリマーと金属のハイブリッドブラシを作成する条件を検討した。表面の均一性が現時点で最も高い試料を用いて電析を実施したが、不均一な表面が得られた。金属イオン供給を外部溶液の拡散によって行っているが、ブラシ層内をイオンが移動する際に不均一性を生じる要因が存在することが示唆された。ポリマー側鎖の官能基の影響が考えられ、ブラシ層形成のための材料選定についての知見を得た。
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