新規な有機ナノ結晶型ドラッグデリバリーシステム(DDS) を開発するために、有機ナノ結晶と血清成分の相互作用の解明を実施した。先ず、構造的に様々に異なる有機色素に対し、結晶サイズ10nm-1μm程度の範囲において結晶サイズを制御することに成功した。続いて、有機ナノ結晶の血清成分への溶解について検証したところ、様々な有機色素ナノ結晶が血清成分と作用し溶解することで分子的な蛍光を発することを見出した。バルク結晶には見られないナノ結晶特有の現象である。引き続き電気泳動等を用いて血清成分とナノ結晶の相互作用の詳細な検討を続ける。生体での検証において、ステロイド薬剤ナノ結晶水分散液や蛍光色素ナノ結晶水分散液を作製しマウスに投与した。特に眼球からの投与に対し、高速クロマトグラフ(HPLC)による定量評価の結果、ナノサイズ効果による薬剤や色素の眼組織内移行性の向上が認められた。経皮的にもナノ結晶は体内に浸透してくことが推測されたが、詳細検討中である。本研究課題の遂行において、有機ナノ結晶は血中で血清成分をキャリアとした新しいタイプのドラッグデリバリーの可能性が期待できる。引き続き有機ナノ結晶型DDSの発展的研究を進める予定である。有機ナノ結晶の作製法において、スプレードライヤー法を用いたことで、ステロイドナノ結晶およびカルパインインヒビターナノ結晶の作製に成功した(論文2報)。有機ナノ結晶を用いたドラッグデリバリーシステムの新展開について招待講演を行った。
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