研究課題
遺伝子治療における副作用を大きく低減するために、送達システムにおける標的疾患細胞(本研究ではがん細胞)に対する特異性を多重のセキュリティーシステムを設けることで高めること最終目標とした。まず、正常細胞での遺伝子転写が起こらないように、人工遺伝子キャリアと遺伝子の複合体において発現を効率よく抑制できるキャリアの開発を実施し、主鎖にポリカチオンを用い、さらに疎水相互作用を導入することで、極めて遺伝子抑制が高く、しかも、これまで開発したものに比べ高効率にがん細胞に取り込まれるキャリアを実現した。さらに、血中での安定性を高めて肝臓や脾臓における細網内皮系での補足を抑制するために、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を導入した。得られた複合体は高塩濃度下、血清存在下でも安定であった。ただし、がん細胞での取り込みの低下を招いたため、がん組織周辺でのpH低下に応答してPEG鎖を切除できるキャリアを設計し、開発した。具体的には、芳香族イミン結合でキャリアに導入したところ、pHが7.4ではPEG鎖は安定であったが、がん組織周辺部のpHとされる6.5においては10分で80%が切除された。これにより、がん部でのみ細胞に織り込まれる多重セキュリティーシステムの開発に成功した。実際にがん細胞に適用したところ、pH7.4の正常細胞条件に比して1300倍という極めて高い遺伝子発現の活性化を実現できた。これは、これまで報告されたがん細胞特異的な遺伝子キャリアとしては、正常細胞との特異性において最も高い性能である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 6件)
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