エピジェネティクスの機構は、(1)DNAのメチル化、(2)ヒストンの翻訳後修飾、(3)クロマチ構造制御 により決定される。エピジェネティクスに異常が起きると様々な疾患が引き起こされる。本研究では、遺伝子発現を支配する(1)DNAのメチル化、(2)ヒストンの翻訳後修飾、(3)クロマチ構造、因子を工学的に制御することにより、全く新しい遺伝子発現制御に繋がるエピジェネティクス工学を確立することを目的としている。さらに、エピジェネティクス工学を、後天性疾患の予防と治療に結びつけた新しい薬剤療法を提案する。 (1) DNAメチル化酵素の阻害剤(脱メチル化)、ヒストンアセチル化酵素による転写制御:ダブルターディングキャリアにより、細胞の分化誘導を促進することに成功、抗がん剤や、生活習慣病へのエピジェネティクス工学を用いた新しい治療法の可能性を報告した。 (2) アニオン性高分子キャリアによるクロマチン構造制御:従来、エンドサイトーシスを利用した薬物送達が細胞へのキャリア輸送を大前提となっていたため、アニオン性高分子を細胞の核内に送達することは不可能と考えられてきたが、カベオラ経路を利用してアニオン性高分子を核内に運ぶことに成功、さらに、核内のクロマチンとの相互作用の可能性が示された。
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