研究課題/領域番号 |
23650294
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
今村 保忠 工学院大学, 工学部, 教授 (40201339)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コラーゲン線維 / 細胞培養 / 細胞隗 / 骨形成 / 管腔形成 / 微小血管 / 線維芽細胞 / 血管内皮細胞 |
研究概要 |
(1)コラーゲン線維の単離法の改良 コラーゲン線維の精製に影響を及ぼす因子(イオン強度、pH、還元剤、2価イオンの有無など)を検討し、改良した。その過程で、ナマココラーゲン線維は一般のコラーゲン定量法であるSircol法の感度が悪いことが分かった。精製を繰り返しても再現することから、充分に精製が達成されていることが示唆された。また、ナマココラーゲン線維の表面の性状は再構成コラーゲン線維等と異なり、特異な材料となることが示された。(2)ナマココラーゲン線維の性状の検討 コラーゲン線維が、培養条件でどの程度線維の形や性質が維持できるのかを検討した。このコラーゲン線維の特徴は、光学顕微鏡で1本ずつ線維を観察できることであるが、細胞共存下では識別が困難であった。AFMを使ってコラーゲン線維の形状を観察した。(3)ナマココラーゲン線維の培養基質としての利用:細胞塊形成条件の確立コラーゲン線維の培養基質としての利用 低吸着培養皿を用いて、種々の細胞が浮遊した条件でコラーゲン線維を混入し、細胞の凝集の有無を観察した。ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト線維肉腫細胞HT-1080,HEK293,PC12 細胞、血管内皮細胞(HUVEC、HAEC)、MC3T3-E1のいずれでも凝集が認められ、条件によっては細胞塊となった。また、凝集の程度は細胞腫に依存した。細胞塊では、Calcein-AM を用いた蛍光染色法により生細胞が確認され、かつ、一定の期間培養を維持できることが分かった。ナマココラーゲン線維を用いた細胞隗形成はあらたな細胞培養法になりうることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度ではコラーゲン線維の安定性の検討が充分なされていない。次年度にコラーゲン線維を蛍光標識し、細胞隗中の線維の挙動を追跡することで、検討する。また、細胞塊形成をタイムラプス観察し、その形成メカニズムを明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
(1)コラーゲン線維の利用法の展開:特に超高次構造体形成法の確立 ナマコ体壁溶解液を酸性溶液に注入すると溶液はゲル状になり、取り出して風乾すると糸状になることを見いだした。一般にコラーゲンは酸性中では分子間の反発が大きくなり溶解性が増すが、この試料の場合は全く逆の性質を示した。この糸の物理的な強度を調べ、生体材料としての利用法を検討する。また、糸の中でコラーゲン線維がどのように配向しているか、電子顕微鏡等により観察し、腱のコラーゲン線維配向と比較する。糸を集め束にすることで一定の強度を付与できれば、縫合糸や人工腱などの医用材料としての利用を検討する。また、線維間の相互作用は中性条件でCa イオンによる制御も可能である。膜や円柱などの形状に成形できるか検討する。このように線維がベースとなった超高次構造体上で細胞培養を行い、細胞の分化や増殖性について検討する。(2)細胞塊の安定化と細胞の分化制御 細胞塊をつくる細胞の種類を特定し、細胞塊の安定性を検討する。MC3T3-E1 細胞や間葉系幹細胞を用い、骨化分化誘導能を検討する。分化可能な場合は、組織に包埋することを検討する。また、長期間安定に分化状態を維持できることがわかれば、組織代替物として生理活性物質のモニターに利用する。HUVECを用いた細胞塊形成実験で、ナマココラーゲン線維懸濁液を培地に添加したところ膜状に線維会合体が形成された。さらにその上に細胞を播種すると管腔様の細胞構造体を形成した。微小血管形成モデルとなりうるか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養装置、顕微鏡等の観察装置は既存の設備を利用する。研究費の大部分は消耗品に使用する。なかでも培養に関連した、細胞、培地、器具の購入が主要なものとなる。
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