研究課題/領域番号 |
23650294
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
今村 保忠 工学院大学, 工学部, 教授 (40201339)
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キーワード | コラーゲン線維 / 細胞培養 / 細胞隗 / フィブロネクチン / 管腔形成 / 骨形成 / 血管内皮細胞 / 血管新生 |
研究概要 |
(1)コラーゲン線維の利用法の展開:特に超高次構造体形成法の確立 ナマコ体壁溶解液を酸性溶液に注入すると溶液はゲル状になる.このゲルを水中から取り出して風乾すると糸状にできた。また、中性条件下で脱塩後、凍結乾燥し、ナマコ由来コラーゲンシートを作成した.このような素材は、コラーゲン線維がさらに会合して形成された超高次構造体形と考えられるが、本年度はコラーゲン線維配向を調べるなど詳細な解析を進められなかった. (2)細胞塊の安定化と細胞の分化制御: 細胞塊形成条件を詳細に検討した.細胞塊形成には、ナマココラーゲン線維の他にフィブロネクチンの関与が明らかになった.フィブロネクチンは培養液に添加した血清由来のものでも、無血清条件下に精製タンパク質を添加しても同様の結果になった.従って、ナマココラーゲン線維とフィブロネクチンの相互作用により、シート構造が形成された考えられる.このシートに結合した細胞がコラーゲン線維を引きつけ、細胞間の距離が縮まり、細胞隗を形成する.細胞がコラーゲン線維を引きつける程度は、細胞種に依存した. 血管内皮細胞を用いると上記細胞シート上で微小血管様の細胞構造体が形成された.細胞構造体の形成には、一定の細胞数とコラーゲン線維濃度が必要であった.細胞による張力と細胞外マトリックスのシート構造の強度のバランスがとれる時に形成されると考えられる. MC3T3-E1 細胞を用い、骨化分化誘導能を検討する。コラーゲン線維は、骨形成や細胞の分化に有効に作用することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コラーゲン線維を用いて培養基質になる新規素材を開発することに関し、種々の素材ができることが分かった.この点の進展は評価できる.しかしながら、そのような素材中でのコラーゲン線維の配向の解析には着手できなかった. 細胞培養に関しては、思った以上の成果が見られた.以下の3点は顕著な進展である.(1)細胞隗形成のメカニズムに関して、フィブロネクチンの関与と形成過程のモデルを提案できた.(2)微小血管様細胞構造体の形成条件を明らかにできた.(3)骨細胞分化や骨形成に有効な材料であることを示した. 以上のように、未着手の課題もあったが、進展の速い課題もあり、おおむね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
(1)コラーゲン線維の利用法の展開:特に超高次構造体形成法の確立 コラーゲン線維からなる糸やシートなどの素材は、コラーゲン線維がさらに会合して形成される超高次構造体形と考えられるが.コラーゲン線維配向を調べるなど詳細な解析を進める. (2)細胞塊の安定化と細胞の分化制御: 本年度は細胞塊形成条件から形成モデルを提案した.次年度はこのモデルの妥当性を、種々の条件を変えて検証する.また、血管内皮細胞の微小血管様の細胞構造体が形成された.これを血管新生モデルとして利用できるか、検討する.MC3T3-E1 細胞を用いで骨化分化誘導能を検討したが、形成された沈殿中のリン酸カルシウムの構造をXRD等で解析し、ヒドロキシアパタイト形成の有無を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度も、培養装置、顕微鏡等の観察装置は既存の設備を利用する。研究費の大部分は消耗品に使用する。なかでも培養に関連した、細胞、培地、器具の購入が主要なものとなる
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