研究課題/領域番号 |
23650296
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
萩原 義久 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, ストレスシグナル研究グループ長 (50357761)
|
研究分担者 |
中島 芳浩 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 生体機能制御研究グループ長 (10291080)
|
キーワード | ペプチド / 蛋白質導入 / 細胞毒性 / iPS細胞 / フォールディング / 転写因子 |
研究概要 |
昨年度の成果により精製リプログラミング因子により標的遺伝子が活性化されたことが確認されており、本年度はハチ毒由来ペプチドであるメリチンによって実際に生体物質が細胞質ー核移行を促進するか否かを精査した。メリチンは26アミノ酸よりなるペプチドであるが、塩基性アミノ酸の反発により中性付近ではランダムコイル状になっている。この状態は生体膜と相互作用し、その構造を撹乱する。そこで昨年度、リジンをヒスチジンに置換した変異体を作成し、中性領域ではヘリックスを形成し、生理的条件下では天然型メリチンに比較して細胞毒性が低下していることを確認している。本年度はまず天然型、及び変異ペプチドの培養細胞毒性のpH依存性を調べた。天然型メリチンは弱酸性で顕著に細胞毒性が増加すること、変異メリチンではpH6-9の範囲では細胞毒性が変化しないことを見出した。そこで実際の天然型及び変異メリチンについて生体物質の細胞質ー核移行効果を調べるために、ペプチド存在下で蛍光蛋白質をコードしたプラスミドの培養細胞への形質転換を行った。その結果、ペプチドを添加することによる形質導入/形質転換効率の上昇はいづれの条件においても観察されなかった。また、大腸菌における形質転換への添加効果についても評価を実施したが添加効果は観察されなかった。この原因を探るために、溶血活性の測定pH5、7を行った。その結果、全てのペプチドが溶血活性を示し、これらペプチドは生体膜の撹乱効果を有することが明らかとなった。これらのことから膜の撹乱効果を維持したまま、ヒスチジンによってペプチドのヘリックスーコイル転移のpH依存性、及び細胞毒性を制御できることが明らかとなったが、生体物質を効率的に核移行させるためには、生体物質とメリチンを同時に取り込ませる等のさらなる改良が必要であることが示唆された。
|