研究概要 |
超音波とエピジェネティックな遺伝子発現制御との関係を明らかにする研究を行い,今年度は以下の研究成果を得ることができた. 骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1に対して,現在臨床で用いられている超音波発生装置SAFHSを用いて低出力パルス超音波(0.03 W/cm2,20分間)を照射した.本超音波の一回照射は,細胞増殖やアルカリフォスファターゼ活性(骨芽細胞の分化の指標)に影響を及ぼさなかったが,他の骨芽細胞の分化の指標であるオステオカルシンの遺伝子レベルを有意に上昇させた.GeneChipシステムとバイオインフォマティク技術を用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った.その結果,骨の分化に関連する数多くの遺伝子の発現が上昇し,ERKやAp1を介して遺伝子間の相互作用があることが予測できた.エピジェネティックな遺伝子発現制御を調べるために,種々のヒストンに対する抗体を用いて評価した.トリメチルヒストンH3 (Lys4, Lys9, Lys36),および,モノメチルヒストンH3 (Lys27) においては超音波照射直後,トリメチルヒストンH3 (Lys9) においては超音波照射30分後にタンパク質発現の有意な上昇が認められた.これらのヒストン修飾が遺伝子発現制御に関連していると推察される. 開発したラット口腔上皮細胞モデルは,長期間の培養により口腔で観察されるような重層上皮を形成する.網羅的な遺伝子発現解析により,上皮形成に重要であるサイトケラチン13の発現制御にFos, Prdm1やCdkn1a遺伝子が関与する可能性が示された.本上皮細胞モデルは,超音波の作用を検討する良いモデルになると考えられる.
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