研究課題/領域番号 |
23650317
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
荒井 陽一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50193058)
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研究分担者 |
海法 康裕 東北大学, 大学病院, 助教 (30447130)
川守田 直樹 東北大学, 大学病院, 助教 (00617524)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 前立腺全摘術 / リハビリテーション / PDE5阻害剤 / 尿失禁 / 勃起障害 / 性機能障害 |
研究概要 |
2002年から昨年までにわれわれが行った365例の前立腺全摘時症例から両側神経温存が術中に電気刺激で確認された141症例を対象とした自己記入式アンケート調査EPIC(術前、術後1,3,6,12,18,24,36,48ヶ月)から、性機能および排尿機能スコアの集計を行った。PDE5阻害剤は術後の性機能障害回復および尿禁制回復の両方に効果があり、加えて、術後3カ月以内にPDE5阻害剤内服を開始した早期群が、3か月以降にPDE5阻害剤を開始した群に比べて性機能・排尿機能の回復が良い傾向にあることが判明した。以上の結果から、PDE5阻害剤を用いたリハビリテーションは性機能回復や尿禁制回復に有効であり、3か月以降よりはそれ以前の内服スタートが望ましいと考えている。 これまでの基礎実験の報告でPDE5阻害剤は血管平滑筋の弛緩による血流増加で組織保護作用を持ち、陰茎海綿体においては線維化を予防することがわかっている。これら陰茎海綿体に対するPDE5阻害剤の長期作用はわかっているが、尿道に対する直接作用の報告はない。最終的には組織保護にはたらくとは予想されるが、一方で、PDE5阻害剤の持つ平滑筋弛緩作用は尿道ではどの程度なのか?との疑問があり、ラットを用いてPDE5阻害剤の尿道機能に対する効果の予備実験を行った。予備実験の結果では、尿道平滑筋にPDE5阻害剤投与による変化は観察されなかった。しかし、非常に興味深い所見として、PDE5阻害剤はくしゃみなどの急激な腹圧上昇時に働く尿禁制反射を抑制している(尿失禁が起こりやすくなる作用も併せ持つ)ことが判明した。【学会発表】2011.9.18.第19回日本排尿機能学会 前立腺全摘術後の尿失禁に対するPDE 5阻害薬の効果2012.2.18.第22回日本性機能学会東部総会 前立腺全摘術後の性機能障害に対する神経温存手術と陰茎リハビリテーション
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度行ったこれまでのデータ解析から、性機能のみならず、尿禁制にもPDE5阻害剤内服が作用していることが判明した。また、平行して施行していたラットを用いた予備実験では、PDE5阻害剤の尿道機能に対する作用として、くしゃみなどの時に尿漏れを防ぐ反射にPDE5阻害剤が関与することが示唆されており(これまでこのような報告はない)、臨床的にはPDE5阻害剤は将来的な尿失禁の回復には貢献するものの一過性に尿失禁がひどくなる可能性が示唆され、最終目的のひとつである‘最適な内服時期の設定’に直接関係する可能性がある所見と考えている。次年度は定量実験に入る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの臨床データの解析で、PDE5阻害剤を用いたリハビリテーションは性機能回復や尿禁制回復に有効であることが判明したが、どのような症例に対して有効であるかといったサブ解析も行う予定である。一方で、動物実験では、本年度の予備実験で、平滑筋の緊張による通常の尿道圧には変化を与えずに、くしゃみなどの急な腹圧上昇に対応する尿禁制反射を抑制することがわかったので継続して実験を進める。実際の臨床において、前立腺全摘術後すぐにPDE5阻害剤を内服した症例の中には一過性ではあるがPDE5阻害剤を投与むしろ尿失禁が多くみられる傾向があり、予備実験の結果は、これらの現象を説明し得るものかもしれないと考えている。次年度はPDE5阻害剤の最適な投与doseを求めていくとともに、ラット数を増やして定量実験に入る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまで当施設にあった既存の実験系に加えて、本研究に必要な主な機材は初年度に購入できているので、物品費はおもに実験ラットに充てる予定である。旅費は国内学会:日本泌尿器科学会(東京4月)、排尿機能学会(名古屋8月)での発表・情報収集のために使うことを予定している。
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