脳卒中後の慢性期重度片麻痺患者に対して、運動模倣に受動運動(passive movement)を組み合わせた訓練システムの開発を行い、運動学習への影響を調べる。特に、運動学習成立に非常に重要な運動フィードバック情報に着眼し、感覚障害を伴う重度片麻痺に対して、四肢の模倣運動努力時に他者運動の視覚フィードバック情報と他動運動から生じる体性感覚フィードバック情報の2つのフィードバック情報を与えることが運動学習にどのような影響を与えるかを検証する事を目的とする。 今年度は、模倣すべき他者運動をヘッドマウントディスプレイを通して被験者に提示し、視覚提示の運動と同期した運動を出力する機器の開発を行った。模倣すべきターゲット運動は、手指の開閉運動であるために、被験者に弾性の高いゴムの風船様の物体を把握させ、空気圧を変化させることにより手指の伸展動作を行わせる機構を採用した。この機構により、把握動作により近い触覚感覚が達成することが可能となり、無理な指の伸展位を防ぐことが期待できる。また、被験者に提示する他者運動のコンテンツは、一人称視点の手指の開閉運動を一秒間に300枚の高速度で高速度カメラにより撮影を行った。このコンテンツを、対象となる片麻痺患者の運動機能が、患者間で手指の開閉角度、速度に大きなばらつきが見られる事を考慮し、matlab(Mathworks社)により高速度で記録した画像の提示時間と提示枚数を設定可能なソフトウェアを自作し提示を行った。本機器による風船様の物体の空気圧変化が被験者の手指を受動的に開閉させる力を加える事が可能であったかの検証実験を行った。男性3名、女性3名の計6名で最大屈曲角度平均は54度で、最大伸展角度平均は、-17度であった。今後も、運動麻痺患者に対して行い、機器の更なる改良を行う予定である。
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