研究課題/領域番号 |
23650326
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
井上 貴雄 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (80513225)
|
研究分担者 |
鈴木 倫保 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80196873)
藤井 正美 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (90181320)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 脳梗塞 / 光塞栓法 / 局所脳冷却 / 脳波 / ペルチェ素子 / 急性期 |
研究概要 |
脳梗塞に対する急性期治療に対して、低体温療法や咽頭冷却による脳低温療法が効果的であることは多くの研究で報告されている。そこで、我々は、脳梗塞領域を直接的かつ局所的に冷却する方法である局所脳冷却であれば、重大な副作用なしに脳梗塞に対して、高い急性期治療効果があると仮定し、実験を開始した。光塞栓法と局所脳冷却のいずれも中動物に適用可能な手法とした確立された技術であるため、初期はネコを用いた実験でセットアップを開始したが、脳梗塞に対する局所脳冷却の治療効果をラットで調べた例は無かったため、まず、ラットを用いた実験を実施した。実験では光塞栓法による脳梗塞巣の形成後、1時間以内に梗塞巣領域を開頭し、ペルチェデバイスを用いた冷却を6時間(冷却群)と冷却を行わず6時間放置した群(対象群)でそれぞれ実験を行った。6時間後、灌流固定を実施して、脳を摘出し、TTC染色による脳梗塞領域の評価を行った。冷却群は対象群と比較して、有意に梗塞領域の拡大が抑えられていた。さらに、冷却実験後、そのまま生存させる群を作製し行動実験を行った。上肢の運動機能を握力計を用いて調べた。その結果、冷却群において、運動機能が維持されていることが確認できた。これら一連の実験では、経時的に脳波計測も実施しており、脳梗塞の形成によって引き起こされる異常脳波(てんかん用の棘波)が光塞栓法による脳梗塞巣からも引き起こされる事を確認し、その異常脳波の発生を抑えていることが確認できた。これは、我々がこれまでに実施してきたてんかん焦点より発生する異常脳波に対する抑制効果と類似した影響と見られた。初年度はネコ・サルを用いて脳梗塞に対する実験はできなかったが、局所脳冷却に対する影響はネコ(2頭)、サル(1頭)で実施し、脳梗塞実験実施における手技的や装置に関する問題はほとんど改善された状況にあるといえる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時には、ネコを用いて実験をする予定にしていたが、初期の時点でネコを追加確保するための十分な費用が、研究費内で賄えるかどうか難しい状況であった。そこで、ラットを用いて急性期と亜急性期の実験を実施することで、中動物を用いた実験が速やかに開始できることも念頭に置き実験を開始した。ラットの実験では概ね良好な結果を得た、一方で、中動物への適用において実験手法に再検討が必要な点も見つかった。初年度の結果を踏まえて次年度は中動物(ネコ・サル)を用いた実験に着手することで、当初の目的を達成できるよう努力する。
|
今後の研究の推進方策 |
ネコを用いた実験を開始する。光塞栓法を用いて梗塞巣を形成させ、その領域を局所的に冷却することによって、脳梗塞の拡大を抑えるという基本方針は同じである。また、ラットで得られた知見を元に、申請書における実験方法に追加して、より臨床での条件に近い設定で実験を行う。実験は急性期から亜急性期にかけての脳梗塞領域に対する長期的な局所脳冷却の効果と長期間の局所脳冷却が全身状態に及ぼす影響を調べる。また、初年度はネコ・サルを用いて脳梗塞に対する実験を達成できなかったが、局所脳冷却自体の実験はネコ(2頭)、サル(1頭)で実施し、脳梗塞実験実施における手技的や装置に関する問題はほとんど改善された状況にある。
|
次年度の研究費の使用計画 |
●備品:初年度の実験において、脳波解析が脳梗塞領域の状態を評価するために効果的であることがわかった。そこで、実験・解析を円滑に進められるよう、脳波解析ソフトを最新版に更新する。●消耗品1:動物の購入費用に当てる。●消耗品2:消耗品として冷却用のペルチェでバイスや、温度センサーを購入する。また、冷却システムの維持に必要な電子部品やデータ保管用のHDDを購入する。●旅費等:研究成果を報告するために学会参加用の旅費や論文発表に必要な経費を計上する。
|