研究課題/領域番号 |
23650327
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡田 誠司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30448435)
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キーワード | リハビリテーション / レーザーマイクロダイセクション / トランスクリプトーム |
研究概要 |
本研究では、げっ歯類中枢神経損傷モデルとギガシークエンサーを用いて、リハビリ前後での大脳皮質運動神経における分子発現の網羅的な解析を行ない、リハビリ効果の数値化や中枢神経可塑性に関わる因子の同定を目指す。中枢神経損傷モデルは頭部外傷または脊髄損傷モデルを作成し、運動ニューロンの選択的な採取は我々の開発した核ソーティング法を用いる予定であった。しかし、今年度からレーザーマイクロダイセクションのシステムを導入し、核ソーティングよりもレーザーマイクロダイセクションによる選択的な運動ニューロン採取の方が効率が良く、かつ網羅的なトランスクリプトーム解析に適していることが明らかとなった。さらに、採取した運動ニューロン選択的に発現遺伝子解析を行うことに成功しており、特に神経活動性のマーカーや神経栄養因子、軸索輸送蛋白関連因子、神経伝達物質受容体などの定量化が可能となった。これらの遺伝子発現が、実際の下肢運動機能やリハビリテーションとどのように相関するのかを明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、運動ニューロンの細胞核をソーティングし、トランスクリプトーム解析を行う計画であったが、採取核のmRNAレベルを測定したところ、ハウスキーピングジーン量でも訳1/3程度しか残存していないことが明らかとなった。すなわち、核膜孔からのactive transportや漏出機構により核内のトランスクリプトーム解析では不十分なことが示唆された。そこで、我々はレーザーマイクロダイセクションを用いた運動ニューロンの選択的解析を試みた。その結果、運動ニューロンを選択的に回収し、なおかつ神経細胞の活動性の指標であるcfosやZIFといった発現遺伝子の定量化に成功した。Single cell PCRや次世代シークエンサーの上位機種との組み合わせにより、より実践的に運動ニューロンでのトランスクリプトーム解析が可能となった。げっ歯類を用いた下肢運動麻痺モデルの作成も順調であり、リハビリテーションが運動ニューロンの遺伝子発現に与える影響を具体的に解析できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
運動ニューロンに於ける遺伝子発現が下肢の運動機能と相関しているかを解析するために、脊髄完全切断モデルと鎮静剤投与による長期運動制限モデルを作成し、脊髄レベルでの運動ニューロンの発現遺伝子を比較する。運動活動性とどのような遺伝子群が相関するのか、また下肢リハビリテーションを行うことで、単純に運動と連動する遺伝子群と、神経回路形成に関わる遺伝子群の区別を行う。トランスクリプトーム解析では、特に生存や神経栄養因子反応性などのgene ontologyカテゴリーのみならず、①neurotransmitter、②シナプス伝達に関するマシナリー分子、③軸索輸送関連蛋白分子、④細胞膜受容体分子、⑤シグナル伝達分子を中心に網羅的な発現解析を行い、その機能を定量化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
レーザーマイクロダイセクション用のプレパラート、Single cell PCRの試薬費用、次世代シークエンサー解析の試薬代の一部に充てる。
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