研究概要 |
表面筋電図による舌骨上下筋群および胸鎖乳突筋の表面筋活動量の研究により、チューブ吸い“蕎麦啜り様訓練”は、シャキア訓練やメンデルゾーン手技等従来法と比較して、舌骨上下筋群では、シャキア訓練に匹敵する高い筋活動量を示す一方で、胸鎖乳突筋の活動量は小さく嚥下に直接関係しない頚部筋には負荷が少ない結果を得て、その成果は日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌上で報告した(同誌16(3),243-252,2012)。しかしながら、次いで行った嚥下造影での予備実験では、咽頭収縮また鼻咽腔閉鎖向上の所見は十分、認められなかった。 多様な症候を示す嚥下障害に対応するには、“蕎麦啜り様訓練”も含め他手技も含めた嚥下リハビリ手技のセットが必要と考えた。われわれは次に鼻咽腔閉鎖機能改善目的の手技の従来法の見直しを行った。日本摂食・嚥下リハビリテーション学会でも推奨されている鼻咽腔閉鎖改善の手技としてソフトブローイングが広く知られている。ソフトフローイングは、水を貯めたコップにストローを差しブクブクと息を吹き込ませる呼吸器にも負担が少なく簡便な訓練法である。平成25年4月~7月に日本でも有数の嚥下リハビリの専門機関である静岡県浜松市リハビリテーション病院の外来嚥下障害患者での嚥下訓練効果の研究に参加し、ブローイングも含め嚥下リハビリ体操セットの有効性を確認した。しかしながら、認知症患者や高齢者では誤って水を吸い込む誤嚥リスクがあり、同法は実施できていないのが現状である。そこで、われわれは高齢者や認知機能低下者でも安全に訓練ができるように、逆流防止弁を付与したストローを発案した。嚥下造影予備実験において、ソフトブローイング時の食道入口部の開大の新たな所見も得て、今後は逆止弁付ストロー開発を進めると同時に、咽頭圧計を用いたソフトブローイング時の食道入口部開大効果の検証も計画している。
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