本研究の目的は、ラット脳損傷モデルを用いて姿勢調節障害の特徴を定量的に明らかにし、それらに対するリハビリ介入の効果を検討することである。これは、中枢神経損傷損傷による姿勢調節障害に対する的確なリハビリプログラムの開発のための基礎的データの提供につながる臨床的意義がある。これまで我々は、ラット用重心測定システムを構築し、生体を用いた測定に耐えうるシステムを開発した。 平成25年度においては、ラット用重心測定システムを用いて健常ラットを前後・左右方向に傾斜させた際の重心変動と四肢の筋活動の同時計測による姿勢調節能力の評価を行った。加えて、四肢の筋活動の慢性記録を導入し、ラットの姿勢変化中の安定的な同時計測を可能とした。 この結果、異なる床面傾斜による外乱刺激に対するラットの特徴的な四肢・体幹の姿勢調節反応がみられた。その特徴として、異なる傾斜角度および傾斜速度などの刺激条件の違いにより、代償的および予測的に姿勢を補正する反応と考えられる傾斜角度の増加に応じた体重移動や四肢の相同的な筋活動がみられた。この姿勢調節反応は傾斜速度の違いによりも傾斜角度に依存する傾向にあった。一方、ラットの脳損傷モデルでは、傾斜外乱に対して麻痺側肢の機能低下により著明な反応の遅延がみられ、健側肢と体幹による代償的な姿勢補正が行われていた。 以上より、姿勢調節能力の向上を目指すリハビリテーションにおいて、姿勢調節反応の状態を定量的に捉え、介入方法として外乱刺激を用いる際の適切な刺激量を考慮する必要が考えられた。
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