先行研究に引き続き、廃用性筋萎縮の動物実験モデルを構築した。ラット(Wistar種およびFischer種)の右下腿から遠位部をギプス固定することによる筋萎縮の誘導モデルを用いた。研究対象筋はSO線維が多いヒラメ筋(SM)、FG線維が多い長指伸筋(EDL)を選択した。筋萎縮の実験モデルでは、10日間ギプス着用側(右)のヒラメ筋で有意な筋萎縮が認められたが、長指伸筋の萎縮は左右差で有意差が無く軽微なものであった。 筋血流量の測定に関して、従来の経皮的な血流測定では、筋固有の血流量を対象とするには限界があり、本研究の目的と合致しないため、Br標識microsphereを用いた血流量の測定を採用した。尾動脈から血圧測定等のために血管を確保したうえで、頸動脈からカテーテルを左心室まで進入させ、microsphereを末梢循環系へと投与し、組織を回収の上で分析する手法を用いた。腎臓などの対称性臓器を基準として、下腿筋群における左右血流差を分析した。血流測定結果においては、ギプス脚のヒラメ筋で有意な血流現象が認められた。時系列に置いては、ギプス装着後、速やかに本筋の血流減少が認められた。 筋萎縮による遺伝子発現の変化を網羅的に分析するために、DNAアレイ解析を試みた。様々な遺伝子群での発現が認められ、10日ではSarcomere遺伝子群をはじめとする骨格筋形成に関与する遺伝子発現がヒラメ筋で低下し、degradationやapoptosisなどの分解系においては、ヒラメ筋での発現が高い傾向を示した。さらに、いくかの対象となるものに関してはRT―PCRによる分析もあわせて行った。 期限内に筋血流と筋萎縮誘導機構まで解明することは困難であったが、筋血流の低下や停滞が遺伝子発現を変化させ、筋萎縮の1つの因子である可能性を示唆することができた。更なる筋萎縮と血流の関連性を検討していきたいと考えている。
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