研究課題/領域番号 |
23650352
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
村山 長 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (60219946)
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キーワード | 医療・福祉 / 生体生命情報学 / 計測工学 / ウエアラブルセンサー / 健康管理 |
研究概要 |
本研究は,高齢者の多くが着用している有床義歯(入れ歯)に超小型センサーを埋入することにより,高齢者の口腔内の生体情報を常時計測するシステムの実現を最終的な目標とする.平成24年度は,まず,平成23年度に購入した加速度センサーと温度センサーのそれぞれを埋入した口蓋床(有床義歯で,人工歯のない床だけのもの)を義歯床用レジンで製作した.次に,口蓋床を用いて以下の実験を行った. ・温度センサーを埋入した口蓋床を45℃の湯と17℃の水に交互に浸した.この時の温度変化を計測した. ・加速度センサーを埋入した口蓋床を用いて,様々な動作(咀嚼,歩行,転倒など)を行った際の加速度を計測した. 以上の実験の結果,次のことが分かった.まず,温度センサーにより,湯や水に浸すことによる温度変化を計測できた.このことより,体温の計測だけでなく,食事を取っているかどうか(たとえば,熱い茶を飲んでいるかなど)の判断も可能と考えられた.また,湯は45℃であったが,計測された値は最高で39℃であった.これは,センサーの埋入に用いたレジンは熱伝導率が低く,実際の湯の温度に達する前に,水に浸したことによると思われた.17℃の水対しても,湯の場合と同様の理由で,実際の水の温度よりも高く計測された.また,加速度センサーにより,歩行,転倒,咀嚼のそれぞれの動作に対して特徴的な加速度のパターンが計測された.このことから,加速度センサーにより,動作や異状の識別が可能と思われた. 以上と並行して,ウエアラブルセンサーや生体情報計測の最近の動向も,学会などに出席し,調査した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書における平成24年度の実施計画は,次の通りであった: 「口蓋床を製作し,センサーを埋入する.センサーを口蓋床に埋入した状態で,計測およびデータの転送できるかを確認する.」 温度センサー,加速度センサーともに計測は可能であることを確認できた.しかし,温度センサーはロガー方式でデータを転送するタイプであったが,データを転送するためには口蓋床を破壊する必要があった.また,加速度センサーは無線でデータを転送するタイプであるため,口蓋床を破壊する必要はなかったものの,加速度センサーとデータ受信機が至近距離にないとデータ送信が難しいことも分かった.以上のようにデータの転送では,いずれのセンサーも課題が残るものの,実験自体は計画通りに進んでおり,100%の達成度と考えている. また,交付申請書で最終年度(平成25年度)に予定していた「様々な動作(咀嚼,歩行,転倒など)を行った際のデータ計測」は平成24年度にすでに終えており,現在までの達成度は3年間の全計画内容の7割程度と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書では,最終年度(平成25年度)に以下の研究を行う予定になっている. 「様々な動作(咀嚼,歩行,転倒など)を行った際のデータを取得する.様々な動作とデータの対応関係を分析し,計測したデータから動作を自動的に推定する方法を検討する.」 このうち,「様々な動作(咀嚼,歩行,転倒など)を行った際のデータ計測」は平成24年度に終えているため,平成25年度は,残りの「計測したデータから動作を自動的に推定する」方法を検討し,自動推定のためのプログラムを開発する予定である.すでに計測したデータから,種々の動作に対して特徴的な加速度のパターンがあることが分かっており,比較的容易にプログラムを作成できると考えている. また,平成24年度にセンサーを埋入した口蓋床を製作したが,温度センサー,加速度センサーとも超小型ではあったが,埋入すると口蓋床に対してかなり大きく,装着した状態のままでは食事は困難であると思われた.また,平成24年度の実験で,両センサーともデータの転送に課題があることも分かった.このため,平成25年度に,より小型か,あるいは布状で,本研究課題に適切なセンサーを調査し,適切なものがあればそれを購入し,計測実験を行う予定にしている.適切なセンサーを調査するため,引き続き,学会などに出席し,情報収集するとともに,関連分野の研究者と意見交換したいと考えている. なお,これまでに得られた結果は,まとめて,成果発表を行いたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画は以下の通りである. (1)これまで加速度センサーと温度センサーを用いてきたが,より小型か,あるいは布状で,本研究課題に適切なセンサーを調査・選定し,購入する.また,必要に応じて,センサーを接続する機器やコンピュータを購入する.35万円の費用を見積もっている. (2)実験に使用する常温重合レジンなどの材料・部品を購入する.6万円の費用を見積もっている. (3)ウエアラブルセンサーや生体情報計測の最近の動向を調査するための旅費として,35万円の費用を見積もっている. (4)これまでの研究成果を学会で発表するための旅費および学会参加費として,15万円を見積もっている.
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