研究課題/領域番号 |
23650354
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研究機関 | 山形県立保健医療大学 |
研究代表者 |
伊橋 光二 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (40160014)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 咳嗽力 / 電気刺激 |
研究概要 |
寝たきり患者では、咳嗽力低下による気道内分泌物の排出は生命予後に関わる重大な問題であり、その対応に難渋することが多い。咳嗽を補助するために腹筋群を電気刺激する方法が脊髄損傷患者で研究されているが、寝たきり老人では研究されていない。一方、寝たきり老人では、脊髄損傷患者と異なり、腹筋群の収縮がわずかであっても残存しており、筋電誘発型電気刺激装置を用いれば、その収縮をトリガーとして簡便に電気刺激を行える可能性があると考えた。そこで、本研究では、筋電誘発型電気刺激装置を用いた腹筋群への電気刺激法を検討するために、先ず、健常な青年と老人を対象に、有効な電気刺激条件や電極配置、電気刺激のタイミングなどについての基礎資料を収集することを目的としている。 平成23年度は、筋電図をトリガーとして電気刺激が行える筋電誘発型電気刺激装置を購入し、本学所有の咳嗽力測定機器(呼吸機能測定機器)と合わせて予備実験を行って計測機器をセットアップし、さらに健常青年を対象にデータ収集を行う予定であった。 この計測機器のセットアップにおいて、咳嗽力(咳嗽時最大呼気流速peak cough flow: PCF)測定時の体位を考慮する必要性が判明し、予備研究として健常青年24名を対象とし、座位と背臥位での比較を行った。この結果、他の呼吸機能指標と同様にPCFについても背臥位よりも座位が高値を示すことが確認された。本研究では寝たきり老人を想定し、背臥位での計測を予定しているが、測定値の解釈に注意が必要であることが明らかになった。 健常青年を対象とした電気刺激による咳嗽力補助については、事項に示すような要因により進展しておらず、平成24年度において健常老人とともにデータ収集を行う。 なお、本研究の実施に関する倫理審査は、本学倫理委員会より承認を得た(承認番号 1202-22)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の平成23年度の計画は、筋電図をトリガーとして電気刺激が行える筋電誘発型電気刺激装置を購入し、本学所有の咳嗽力測定機器(呼吸機能測定機器)と合わせて予備実験を行って計測機器をセットアップし、さらに健常青年を対象にデータ収集を行うことであった。しかし、健常青年を対象とした電気刺激による咳嗽力補助実験については進展しておらず、現在までの達成度は「遅れている」と自己評価せざるを得ない。 一方、実験セットアップ中に必要性が判明した咳嗽力(咳嗽時最大呼気流速peak cough flow: PCF)測定時の体位の影響については、予備研究として健常青年24名を対象とし、座位と背臥位での比較を行い、背臥位よりも座位が高値を示すことが確認され、測定値の解釈に注意が必要であることが明らかになった。 健常青年を対象とした電気刺激による咳嗽力補助実験が進展していない要因は概ね以下のとおりである。先ず、上記の咳嗽力測定と体位の関係の確認実験が必要であり、これを優先して実施した。また、胸郭運動計測に用いる計測装置(レスピトレース)の不調などの影響があった。また、本研究では筋電誘発型電気刺激装置を新たに購入する必要があったが、全研究費に占める割合が高く、交付金額が最終決定してから購入手続きを開始したため納入が遅くなったことなどがあげられる。また、研究代表者は仙台市在住であり、東日本大震災による様々な影響があったことも申し添えさせていただく。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に実施できなかった健常青年のデータを収集するとともに、健常老人を対象にデータ収集を実施する予定である。 研究体制としては連携研究者2名の他、研究協力者として本学大学院生の協力を得て体制を強化する予定である。 研究方法としては、申請書記載のとおりであり、筋電誘発型電気刺激装置(平成23年度購入)と、神経筋電気刺激用の装置を用いて設定可能な範囲で刺激条件を検討する。 電気刺激する部位は腹直筋と側腹筋群(内および外腹斜筋、腹横筋)の単独あるいは組合せ刺激とする。咳嗽力は咳嗽時最大呼気流速(peak cough flow: PCF)を主要な指標とする。この他、胸郭運動計測や、肺機能検査など身体特性情報も収集する。 平成24年度に健常青年と健常老人の収集することになったが、本学の地域は冬期間に雪のための交通障害が発生する危険性があり、地域在住の老人の研究参加の制約になり得る。このため、先ずは健常青年のデータ収集から開始するが、ある時期からは同時並行でデータ収集を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は繰越を含めて134万円である。 主要な物品である筋電誘発型電気刺激装置は平成23年度に購入済みであるので、平成24年度は、電気刺激装置用電極、咳嗽力や呼吸機能測定用の消耗品、研究協力者への謝金、対象者への保険、情報収集および成果発表の旅費などに使用する予定である。 平成23年度の研究達成度の自己評価は「遅れている」という状況であり、遅れを取り戻すべく研究への取り組みを進め、研究費の計画的な使用に努めたい。
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