冬季の住宅内でのヒートショック、いわゆる室間の温度差についての模擬実験を実施し、暖房室(気温25℃)から非暖房室の脱衣室(同11℃)に移動した時の生理負担を青年男性(平均24歳)、高齢男性(同69歳)、高齢女性(同66歳)の各6名について測定した結果を比較した。生理反応として上腕血圧、指先血圧、皮膚温、直腸温等であり、温冷感、快適感、許容度などの主観申告を記録した。次に脱衣室を熱放射(カーボンヒータ)、対流(温風ヒータ)、熱伝導(電気カーペット)でそれぞれ500Wの電力量で暖房した際に形成される不均一で非定常な温熱環境においても同様な実験を実施し、生理反応の測定と主観申告の記録を実施した。高齢者では暖房室であっても収縮期血圧の上昇が認められ、一旦気温10℃の廊下を通過したためか、不均一暖房環境であったためと推察された。収縮期血圧の上昇に高齢者において性差は認められなかった。暖房環境においての主観申告による評価は、高齢男性で有意に寒い側で、非許容割合は有意に高くなったが、青年男性と高齢女性との間には差が認められなかった。このことから、高齢男性についての温度上昇・下降時の生理反応を精査する必要が見出された。そこで、安静状態の高齢男性8名(平均69歳)を気温26℃から±0.6℃/分で20分間変化させ、14℃と38℃に更に20分間滞在させた際の皮膚温、血圧等の変化を計測するとともに、温・冷覚閾値を測定した。平均皮膚温は気温上昇時に大腿での皮膚温上昇が小さく、かつ、下肢の暖かさの感じ方が弱かった。これにより、熱放射による暖房器具の有用性が示唆された。
|