研究課題/領域番号 |
23650365
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤原 勝夫 金沢大学, 医学系, 教授 (60190089)
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研究分担者 |
淺井 仁 金沢大学, 保健学系, 教授 (50167871)
外山 寛 金沢大学, 医学系, 准教授 (10172206)
前田 薫 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 講師 (00454687)
清田 岳臣 札幌国際大学, 人文学部, 講師 (40434956)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / 感覚参照枠 / 立ち上がり動作 / 姿勢セット |
研究概要 |
急速な姿勢変換運動において、あらかじめ運動終了時点での感覚情報が予測され、運動開始前に感覚参照枠の再構成がなされると考えられる。椅座位から立位へ姿勢を変換する運動においても、運動開始に先立って感覚参照枠が再構成されると考えられる。本年度は、アキレス腱振動刺激および足底部(中足骨骨頭部)圧刺激を実施した。最初に、立位姿勢において、強い刺激では後傾が生じ、弱い刺激では前傾が生じることを確認した。さらに、アキレス腱と足底部に弱い刺激を同時に加えた場合に、姿勢変換が生じないことを確認し、両感覚情報が比較され、マッチングするような制御がなされていることを確認した。次に、立ち上がり動作において、種々のタイミングでアキレス腱へ振動刺激を負荷した。立ち上がり直後に負荷した場合には後傾が生じ、立ち上がり動作開始まで負荷した場合には立ち上がり後に前傾が生じた。この姿勢応答は、立ち上がり後約1秒で生じた。脳波の随伴陰性変動(CNV)は、予告信号(S1)から立ち上がり動作開始信号(S2)に向けて増大し、ピークに達した。これは、立ち上がり動作開始までに、立位位置知覚の感覚参照枠が再構成・準備され、それをもとに立ち上がり後の立位位置知覚がなされることを示唆していると考えられる。その再構成は、比較的上位の中枢を介してなされると推察される。足底部圧刺激においても、同様の結果が得られた。ただし、立ち上がり後の姿勢応答の大きさは、足底部圧刺激の方が大きかった。このことは、立ち上がった状態の知覚に、下腿三頭筋からの筋感覚情報よりも足底部圧感覚情報の方が強く関与していることを示唆していると考えられる。立ち上がり動作開始前から立ち上がり動作終了後も継続して振動刺激を負荷した場合に、立ち上がり後約1.5秒に後傾応答が生じた。このことは、立ち上がり後に感覚参照枠が再びリセットされることを示唆していると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立ち上がり動作の実験の前に、立位保持時に下腿筋の感覚情報と足底部の感覚情報が比較され、マッチング作用がなされていることを確認した。その後、椅座位から立位への急速な姿勢変換時の感覚参照枠再構成における下腿三頭筋の筋感覚情報と足底部圧情報の役割を個別に検討した。比較的個人差も少なく、当初立てた仮説通りの結果が得られた。現在、得られた結果について、論文の作成に向けて作業を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
椅座位から立位への姿勢変換時の感覚参照枠再構成における、前庭情報と視覚情報の役割を個別に検討する。被験者は、それぞれ健康な若年成人13名とする。運動課題、感覚情報の負荷、記録項目、分析項目は平成23年度の実験に準ずる。ただし、視覚情報の役割を検討する実験は、ゴーグル型ディスプレイを装着せずに開眼で行う。前庭情報への負荷には前庭電気刺激を用いる(担当:浅井(正))。右への身体傾斜が明確に現れる右側の耳後乳突部への定電流刺激(0.4 mA)を負荷する。不関電極は前額部に装着する。視覚情報を負荷する方法として、白黒の縦縞模様視覚刺激を用いる(担当:清田)。縦縞の幅は、姿勢制御に強い影響が現れる視角2度とする。縦縞模様は、右への身体傾斜が明確に現れる左方向へ30度傾斜させて提示する。ただし、この視覚刺激については、視角および傾斜角度について詳細な検討を行う。これにより、前庭情報および視覚情報を単独で負荷した場合の参照枠再構成における役割、その再構成タイミング、および脳内準備過程を、個人差を含めて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、H24年度は、藤原58万(消耗品費25万、国内旅費10万、人件費・謝金18万、その他5万)、浅井2万(国内旅費2万)、外山2万(国内旅費2万)、前田3万(国内旅費3万)、清田5万(国内旅費5万)とする。H25年度も当初の計画通り、藤原40万(消耗品費20万、国内旅費5万、人件費・謝金10万、その他5万)、浅井1.5万(国内旅費1.5万)、外山1.5万(国内旅費1.5万)、前田2万(国内旅費2万)、清田5万(国内旅費5万)とする。
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