本研究は、幼児の力調節能力を明らかにすることである。巧みな動作が必要される指先の筋の焦点を当てるために、被験筋は第一背側骨間筋とした。昨年度までに、この筋による動作調節能力を二次元平面上で評価する手法を確立した。この手法をもとに、幼児の第一背側骨間筋の力調節能力を評価した。その結果、幼児の人差し指の軌跡長は、若齢者と比較して長かった。また、第一背側骨間筋は人差し指の内転筋であるにも関わらず、伸展方向にも貢献することがわかった。内外転の安定には伸展屈曲をすることで安定を高めることが若齢者を対象とした実験で考察されいる(昨年度までの実験において)ため、幼児においても、人差し指の力調節に若齢者と同様のストラテジを用いていることが示唆された。しかしながら、幼児においては、人差し指の変位に個人差が極めて大きかった。 これら結果より、幼児の力調節能力は、(1)若齢者より劣る、(2)人差し指の伸展屈曲により力調節能力を向上させるストラテジをもつ、(3)個人差が極めて大きいことがあきからになった。
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