本研究では、学校体育の授業におけるIT教材の開発ならびに活用状況を調査し、有効に活用するための諸条件を検討することで、学校体育の授業で必要とされるIT教材の内容と利用方法、ならびにそれらを活用するための教師教育の在り方について提言することを目的とした。IT教材は、学習支援用、指導支援用、教師教育用に分類して調査した。 国内では3カ年間に30を超える学校体育の校内研究授業を参加して調査した結果、学習支援としてほとんどの授業でオリエンテーション等でのDVD等での映像教材の活用を実施していた。一方、iPadなどのタブレット型PCでの映像視聴(4授業)、児童・生徒の映像撮影・再生(4授業)、映像データのポートフォリオとしての活用(2授業)の事例を収集できた。現状では1授業に1台もしくは2台程度で、撮影等は、教師が実施するケースがほとんどで、1事例については固定したタブレット型PCの前で演技をして、それを遅延再生で児童が視聴するというものであった。適用されていた運動種目は、器械運動とダンス授業で実施されていたが、今後、運動教材ごとに相応しい適用方法を検討する必要がある。 国外での活用にあるような児童・生徒の動作解析ができるアプリを活用した指導者支援のIT活用は、国内の体育授業では取り入れられているケースは少なかった。動作解析は大学研究室との連携によって行われているのが現状であった。 教師教育を支援するためのIT活用例としては、筑波大学が開発中の実技検定システム(学生が経年的に自身の運動パフォーマンスの向上をポートフォリオにする)や模擬授業評価システム(授業映像データをストリーミングサーバーを介して視聴・評価できる)が先駆的な取り組みとしてあげられた。IT教材の開発と活用は、体育授業・教師教育にとって今後ますます重要な役割を担いさらに発展させるべきである。
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