研究課題/領域番号 |
23650373
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松本 富子 群馬大学, 教育学部, 教授 (70106897)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ダンスの教授過程 / 教師の実践的力量 / ダンス授業の必修化 / 男性教師 / 授業モニタリング |
研究概要 |
本研究の目的は、ダンスの教授過程において教師が発揮する実践的思考や実践的知識について明らかにすることである。23年度は、まず,現職教員に対してダンス授業における実践的力量に関する事前調査を行ない、結果の分析を行うと共に性別や指導経験による傾向について比較検討を行った。また、今後ダンス授業に対するモニタリング実験をおこなうため、授業の撮影を行い、得られた映像が実験に耐えうるものとなるよう検討を行った。 事前調査の結果、ダンス授業を想定した実技研修を受ける前には80%の教師がダンスの授業を行う上で「不安を感じていた」が,事後には肯定的に評価し91%の教師が「不安が解消された」と答えた。特に,ダンスのもつ魅力に触れ「楽しさ・おもしろさ」を味わい,「わかった・なるほど」と思う経験が得られたり,「身についた」と実感した経験の持ち主は,感じていた不安を解消させ、同時に「ダンスの授業を実践したい」,「中学校でのダンス必修化はよい」と積極的な思考を醸成したりすることが認められた。「ダンスの授業を実践したい」の回答については、男性は「大いにそう思う」「そう思う」が66.7%,女性は93.8%であったが、この項目にのみ性差が認められ異なる傾向を示した。つまり、ダンスの実技を通して得られるダンスの内容や指導法への実践的理解に、統計的な性差は認められないが授業実践に対しては男性が女性よりも抵抗があるため、前提条件に男女差が生じないように被験者を選定する必要があることが確認された。 授業モニタリングに用いる映像については、教師の指導行動映像を用いること、全生徒の学習状況を100%記録することは不可能であることから、生徒の運動学習場面に対しては、可能な範囲で2台のカメラ映像を編集する方向で作成することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度は,研究計画にあらかじめ記載していなかったが,現職教員に対してダンス授業における実践的力量に関する事前調査を行なった。ダンス授業にむけた実技経験を通して、ダンスの楽しさの経験や、ダンスの内容や指導法についての実践的理解、ならびに授業実践への意欲等について調査を行うことにより,あらかじめ教師の実践的力量に関して情報を得ると同時に,本研究の中心となる授業モニタリング実験の被験者を適切に選定する上で必要不可欠な調査であると考えられたためである。このことによって本研究への取り組みがより精査され,成果をあげると考えられた。この調査に加えて,予定された計画にしたがって,授業モニタリング実験に用いるのに適切なダンス授業の撮影を行い,映像の検討および編集作業を行った。 このように,23年度の研究計画・内容に含まれていなかった事前調査を加えたことから,当初1年目に予定していた授業モニタリング実験を2年目に実施することで調整を図ることとしたため,若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ダンスの教授過程において教師が発揮する実践的思考や実践的知識について明らかにするため、対象とする教師に授業モニタリングを行ってもらい、二種の方法を併用して記録を収集する。対象とする被験者は、ダンスの指導に熟練している女性教師とダンス指導経験は少ないがスポーツの指導に熟練している男性教師、また、ダンスおよびスポーツの指導経験の少ない男性および女性教師である。併用するのは、オンライン・モニタリングとオフライン・モニタリング法である。結果の分析を通して、対象とした教師がダンス授業における教授過程で発揮した実践的思考や実践的知識の内容をとらえると同時に、性別や指導経験別にその傾向を明らかにする。なお、2年目に予定している研究の2である、介入を加えその後の変化をとらえる介入前後の授業モニタリングについては、24年度内で終了できる内容に計画を調整するものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度当初計画に新たに事前調査を加えて実施したため、授業モニタリング実験の実施を24年度に移行した。そのため、実験にかかる物品や消耗品費として計上した助成金を次年度に使用する。従って、24年度に請求する研究費と合わせた金額の研究費は、以下のように使用する。1 ダンス授業のモニタリング実験の予備実験、本実験を行う。現職教員およびダンス学習指導の理論と実践に熟練した専門家を、被験者または分析者とするため、旅費や謝金を支出する。また、実験結果を記載した大量のデーターの整理・分析をおこなうため、研究補助者を雇い挙げ、分析に必要な解析ソフトを購入する。2 モニタリングの対象とするダンス授業の撮影と編集をおこなう。すでに撮影したものから明らかになった撮影上の課題を可能な範囲でクリアーするように編集する。撮影・編集に際しては,専門的知識のある協力者に提供を受ける。その処理に際しては,映像編集のできる能力の高いパソコン、編集ソフト、大容量のHDを購入する。3 研究調査や成果発表の旅費や投稿料、報告書の作成費用を支出する。
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