本研究課題では摂食障害に深く関連する身体像を取り上げ、身体像を測定する方法を考案するとともに(身体描画法)、考案した方法を用いて摂食障害予防に役立つ教育的な介入方法を模索することが目的である。本年度は昨年度までに集積したデータを分析および考察し、所属学会において研究発表を行った。その概要は以下のようである。 1.全身写真撮影後に「できるだけ正確に描くこと」と教示されて描く身体描画法による全身自画像は自由連想による描画テストに比べ、描画の安定性、再現性が高いことが明らかとなった。また、自己の全身像を写真のように正確に描こうとしても、そこには本人の無意識の身体像が描画に投影されることも確認された。 2.上記の身体描画法により描かれた全身描画と本人の全身写真を用いて、研究協力者と本研究者が身体像の分析観点を示したワークシートに従って、比較分析をする作業を個別に実施した結果、研究協力者の身体に関する諸指標(体型認識度、身体満足度、身体関心度、身体感情、身体態度、理想のBMI)に関し、6項目中4項目(体型認識度、身体感情、身体態度、身体満足度)において介入の実施前後で有意な変化が認められた。これらの4項目はすべて肯定的な変化と考えられた。 3.研究協力者の内省において、「自分の体は予想より太くはなかった。」「思っていたよりも自分の体は悪くなかった。」など、自身の体型に関する主観的で否定的な思い込みを認め、自身の体に対するポジティブな評価が高まった内容が多く聞かれた。これより身体描画法と身体像分析ワークシートを用いた介入は対象が自身の体型に対する否定的な評価や誤った認識に気づき、体型を客観的に自己評価するための方法としてその有効性が示唆された。身体像の再認識が促されると適切な身体意識、ひいては健康的な食生活の維持が促進され、摂食障害の予防につながるものと期待される。
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