平成25年度は、平成24年度に実施した世界的に活躍する版画家と織物作家のインタビュー調査の結果を中心とした研究成果を、3月に米国スタンフォード大学において実施されたAAAI 2013 SPRING SYMPOSIAにて口頭発表と論文にて、海外の研究者に芸術分野における「ゾーン体験」の内容をスポーツにおけるゾーン体験内容と比較した。版画制作と織物制作に共通する感性状況を見出し、スポーツにおけるゾーン体験の特性との共通点を明らかにし、芸術においてもスポーツと同様の仕組みでパフォーマーの感性が働き、ゾーン体験を会得していることを考察した。 上記の内容を踏まえ、11月に発行された人工知能学会誌特集号における論文では、科学と芸術、スポーツにおけるゾーン体験の事例や感性の必要性について記述し、「感性」の定義の再考を行った。 さらに、これまでの感性とスポーツに関する研究成果は、9月に日本トランスパーソナル精神医学/心理学会における論文発表や、ベースボール・マガジン社発行の「コーチング・クリニック」誌上における「スポーツ感性学」の連載で発表を継続している。特に、本連載では、未だ確立されていない「スポーツ感性学」の確立に向け、学問的位置付けを踏まえて授業内容を公開している。 その他、同誌では、平成25年度に社会問題になった「スポーツと体罰」の特集を組んでおり、筆者はその際に3回に渡って、スポーツ指導者との対談や寄稿を通して感性の観点からスポーツにおける体罰について論じた。3年に渡り本研究の成果は、今世紀が「感性の時代」と言われる所以に迫り、感性の重要性を再認識する点で有意義なものになったと思われる。
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