研究概要 |
最近、腱および靭帯の障害とコラーゲン遺伝子多型等との関連が示されている(e.g., Posthumus et al. 2009)。これらの障害の1つの要因として、腱や靭帯の力学的特性が挙げられる。そこで本研究では、先行研究において腱および靭帯における障害と関連があることが報告されているコラーゲン(COL1A1, COL5A1)、成長因子(GDF5)および蛋白分解酵素(MMP3)遺伝子多型と腱組織の力学的特性との関連を明らかにすることを目的とした。100名の成人男性を対象として、膝伸筋群および足底屈筋群の腱組織の力学的特性をKubo et al.(1999)の方法に従い測定した。腱組織の力学的特性は、等尺性収縮中の超音波縦断画像より腱組織の伸張量を実測し、「張力―伸張量」関係から最大ストレイン(伸張量/初期長)およびステイッフネスを算出した。各被検者の唾液を採取し、COL1A1, COL5A1, GDF5, MMP3の遺伝子多型を分析した(分析は外注)。COL1A1は、本研究のすべての被検者が同じ多型を示した。COL5A1遺伝子多型の中で、膝伸筋群においてC型群の腱組織の伸展性が他の群よりも高かったが、足底屈筋群ではそのような差異はみられなかった。GDF5およびMMP3の遺伝子多型で分類した3型群の間には、腱組織の最大ストレインおよびステイッフネスに有意な差は認められなかった。ヒト生体における腱組織の力学的特性は、膝伸筋群についてのみタイプVコラーゲンの遺伝子多型の影響がみられた。
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