研究課題/領域番号 |
23650389
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
渡辺 一志 大阪市立大学, 都市健康・スポーツ研究センター, 教授 (50167160)
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研究分担者 |
岡 育生 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80160646)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 視覚障がい者 / 視覚情報 / 聴覚情報 / 磁気センサー / 画像解析 / CORDICアルゴリズム / 無線モジュール |
研究概要 |
本研究は、視覚障害者が聴覚情報を用いてアーチェリーを楽しむことができるアーチェリー補助システムを開発することを目的とする。補助システムは、聴覚情報により的確に競技者に方位情報を伝えるものである。また、補助システムは、競技者の負担にならないことが重要であり、装着する場合には小型、軽量であることが必須の条件となる。 研究では、これらの条件を踏まえ、高精度磁気センサを用いる照準システムを開発・製作した。健常者がアイマスクをした上で試射を行い、高精度磁気センサを用いる方位情報検出器による照準システムと聴覚情報通知装置を開発し、視覚障がい者が実施可能な、左右方向のアーチェリー補助システムを試作した。 (1)高精度磁気センサを用いる方位情報検出器の開発:3次元高精度磁気センサと無線シリアルインターフェイスを接続し、アーチェリー場の的配置に従い、射手の位置から的狙った方向を基準方向とする初期設定を可能とした。 (2)聴覚情報通知装置の開発:高精度磁気センサを用いる方位情報検出器の出力は、無線インターフェイスを介して聴覚情報生成機に入力した。聴覚情報生成器は、方位情報を聴覚情報に変換しスピーカに出力した。・照準から左右にずれがある場合には、ずれの大きさに比例して音の周波数を制御した。・照準があった場合には、連続音を出力した。 (3)照準システムの検証:開発した照準システムの実験。対象:被験者は、アーチェリー経験のある健常者6名とした。試射の方法:弓具は、16ポンドのリカーブボウとアルミの矢を使用した。射距離を10mに設定し、アイマスクを着用した状態において10射行った。さらに、照準システムの評価のため、個々のパフォーマンスの基準としてサイトを使用した通常の状態にて10射行った。被験者から、シューティング時の内省報告を行い、聴覚情報の問題点および弓具の改良点を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高精度磁気センサを用いる方位情報検出器の出力は、無線インターフェイスを介して聴覚情報生成(マイクロプロセッサを用いて製作)に入力した。ここでは、CORDICアルゴリズムを導入した。導入理由として従来の手法ではアナログ値を処理しておりこの手法を利用できないため、CORDIC アルゴリズムを導入した。このアルゴリズムの特徴は,マイコンなどに向けて処理が単純化されている,また,階段近似などと比較して十分な精度を得ることができる点が挙げられる。聴覚情報生成器は方位情報を聴覚情報に変換し、スピーカに出力するものである。左右方向の情報を聴覚各情報に変換するシステムの開発に時間を要したが、概ね開眼時の5~7割の的中精度を得た。長時間の保持にはかなりの疲労感が生じるため、さらに弓の強度を軽量化することが必要と考えられる。 上下の情報変化については、三次元高精度磁気センサを用いる方位情報検出器の出力を、無線インターフェイスを介して聴覚情報生成(マイクロプロセッサを用いて製作)することで左右方向と音の周波数等の調整によって区別するための検討がさらに必要であるが、ある程度のめどがついた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、左右情報について検討し、ある程度の精度を得ることができた。今後、照準から上下にずれがある場合、ずれの大きさに対応した音の検討を行い、左右情報を識別して認識できる音について周波数等の検討を行い、中心を狙う照準器の開発を行う。さらに、シューティングされた矢の得点をただちに競技者に知らせる得点通知システムについても検討を行う。 矢をシューティングした後、的のどこに当たったかを知ることは、アーチェリーの楽しみの重要なポイントである。視覚情報を用いない場合には、的中した矢の位置を検出して聴覚情報で、的のどの位置に当たったかを通知する必要がある。本研究では、矢が刺さった的の画像に画像処理を施して矢の位置を推定する方法、ならびに、的の近傍で飛んでいる矢のかすかな軌跡を画像として検出し、的のどの位置に当たるか推定する方法の2つの方法について検討し、得点通知システムの開発を行い、視覚障がい者に導入できるシステムの開発を行う。また、聴覚情報の伝達におけるヘッドホンの効果についても検討する。併せて、シューティング指導の基礎的資料を得るため、フォームを画像解析から検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究経費は、上下方向の聴覚情報を検討し、中心を狙う照準器を開発しさらにシューティングされた矢の得点をただちに競技者に知らせる得点通知システムを開発する。併せて、シューティング指導の基礎的資料を得るため、新たに画像解析に必要となるカメラおよび解析ソフト一式を購入する。物品費(1,390千円):画像解析に必要となるカメラおよび解析ソフト一式等。・液晶デジタルカメラ、・解析プログラム、弓具関係(弓、ストリング等)、センサー部品(無線インターフェイスマイクロプロセッサ等)旅費(140千円):研究成果発表、資料収集人件費・謝金(50千円):実験被験者謝金、実験補助謝金その他(20千円):会議費等
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