本研究の目的は、クロスカントリースキー競技を対象とし、滑走中の動作および力がパフォーマンスに与える影響について明らかにすること、滑走中のバイオメカニクス的指標と生理学的指標の変化とパフォーマンスとの関係について明らかにすることであった。様々な走法や条件下滑走中のポールおよびスキー板反力測定と映像解析、心拍数、血中乳酸濃度および酸素摂取量を測定した。 滑走中の動作および力がパフォーマンスに与える影響については、V2スケーティング走法において、推進力に対する上肢と下肢の貢献は同程度であること、滑走速度の増加に伴いポールおよびスキー反力が増加すること、スキー反力曲線は二峰性を示すが滑走速度の増加に伴って二峰性が顕著になることが明らかとなり、滑走速度を高めるためには、ポールおよびスキー反力を高め、明確な二峰性の力発揮を行う必要がある。さらに二峰性力発揮の極致ともいえるフライト局面を意図的に発生させる指導によって、選手のパフォーマンスが向上することが示唆された。 ダブルポーリング走法において滑走中の疲労の影響による動作と力の変化を検討した結果、疲労の影響によって下肢の動作が制限され、推進力となるポール反力が減少することが明らかとなった。このことは、ダブルポーリング走法においても滑走速度を高めるためには下肢の動作が重要であることを示している。 滑走中のバイオメカニクス的指標および生理学的指標の変化とパフォーマンスとの関係については、負荷の増加に伴い、心拍数、酸素摂取量および血中乳酸濃度が増加することが示された。また、クラシカル走法の滑走中は、負荷の増加に伴い、ポール反力が増加し、ダブルポーリング走法からキックダブルポーリング走法、さらにダイアゴナル走法へと走法が変化することが示された。ダイアゴナル走法はキックダブルポーリング走法と比較して、機械的効率が低い傾向にあることが示唆された。
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