本研究は、日常的・継続的スポーツボランティアに対するマネジメントシステムの構築に向けた問題点の把握ならびに基本的な考え方について検討することを目的とした。平成23年度は、地域スポーツクラブの人材及びスポーツボランティア、人材マネジメント論等の文献レビューを行い、研究枠組を整理した。平成23年度の後半から平成24年度にかけて、本務校の制度を利用してオーストラリアに赴き、国際マラソン大会を事例として、スポーツボランティアの調達・開発・維持の状況について情報収集を行った。またスポーツボランティア研究を含むスポーツマネジメント研究・教育の現況についても現地校のカリキュラム分析はもとより研究者へのヒアリングも実施した。平成25年度は、実質的なボランティアである外部指導員の活用に関わる問題について、同内容を取り上げているアーカイバルデータをもとにそれらを整理するとともに、事例にあたって詳細な分析を行った。本研究では、「調達」「開発」「維持」という3つのプロセス(局面)を念頭に置きながら、運動部活動における外部指導者の「調整」「探索」「報酬」という3つのキーワードから運動部活動の理想と現実のギャップを埋める方策について提案した。ここから示唆されたのは、マネジメントのプロセス(局面)という分析視点を明示的に採用することによって研究課題が体系的に整理された形で把握できることであった。総合的な分析を通じて、「調達」及び「開発」の局面では、資格・人材開発に対する姿勢が「無関心-資格至上主義」に二極化していること、主体的な人材育成・能力開発(内部化)視点の欠如といった問題を指摘した。また、「維持」の局面では、処遇をめぐる金銭的報酬への収斂傾向、非金銭的報酬に対する関心の低さ、スタッフの処遇改善に消極的な傾向などを指摘した。
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