マイクロRNA(以降miRNAと略記、個々のmiRNAについてはmiR-#と記述する)は20~25ヌクレオチドの極小さなRNAであり、タンパク質をコードしているメッセンジャーRNA(以降mRNAと略記)とは異なる、いわゆるNon-coding RNAの一種である。miRNAの生体内での機能としてはmRNAに結合することで、直接これを分解するなどして、タンパク質への翻訳を妨げる働きをしている。 心筋や骨格筋ではmiRNA-1、miRNA-13a、miRNA-13b、miRNA-206、miRNA-208、miRNA-208b、miRNA-49などのmiRNAの存在が確認されており、発生段階の各ステージで様々な遺伝子発現の制御をしていると予想されているが、詳細はわかっていない。例えば、骨格筋では筋芽細胞が分化して融合する際、miR-1とmiR-206がギャップジャンクション(細胞境界)に存在するコネキシン43という蛋白質の発現を抑え、融合を促進することがわかっている程度で、他のmiRNAの機能については不明である。 我々はレジスタンス運動による骨格筋の肥大時にもmiRNAが関与すると予想し、マイクロアレイ解析という網羅的にmiRNAの発現量の変化を検出できる方法をマウスの代償性過負荷による筋肥大モデルに適用し、筋肥大時に変化を起こすmiRNAを解析した。その結果、筋肥大時にはmiR-21の発現が特異的に上昇することを突き止めた。miR-21はPDCD4、PTEN、SPRY2などの癌抑制遺伝子をターゲットとしていることが、ターゲット予想プログラムにより予想され、実際肥大を起こしている骨格筋ではこれらPDCD4、PTEN、SPRY2などの癌抑制遺伝子が抑制され、結果的に肥大が起きていることが確認できた。
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