研究課題/領域番号 |
23650403
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
狩野 豊 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90293133)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バイオイメージング / ミトコンドリア / 細胞内pH |
研究概要 |
研究の背景:細胞内pH [pHi] の恒常性は細胞の機能を維持するために重要である.運動時にはpHiが変動するものの,膜輸送システムや筋細胞内ミトコンドリア代謝などによって恒常性が維持されていると考えられている.しかしながら,筋収縮にともなうH+ が,いつ,どこで産生され,筋細胞に蓄積し,細胞外や血液中に運搬されるのかについて,in vivo環境下での直接的な証明はなされていない. 目的:本研究は, 1) in vivo環境下において,特定の筋線維に低pH溶液を負荷し,バイオイメージングより単一筋線維レベルでのpH動態を観察する技法を確立すること, 2) 筋収縮負荷時のpHi 動態を単一筋線維レベルで評価することを目的とした. 実験手法:Wistar系雄性ラットの脊柱僧帽筋を麻酔下で露出させ,pH感受性蛍光指示薬であるBCECFを負荷し,pH6.5溶液をマイクロインジェクションによって注入し,その際の[pHi]動態を観察した.また,電気刺激(100 Hz, 0.7 秒間/3秒間隔, 電圧5-7 V)による連続的な筋収縮後の[pHi]動態を筋線維毎に評価した. 研究成果:低pH溶液を注入した筋線維では,注入直後から[pHi]低下が観察され,15分後には注入前値から30%まで持続的に低下し,隣接する筋線維においても15%程度の低下が見られた.筋収縮を負荷した場合において,発揮張力の低下は[pHi]の変化をともなわないことが示された.このような単一筋線維レベルでのin vivo pHイメージングは,これまでの代謝研究では行われておらず,pH代謝機構の解明に寄与する重要なモデルであると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画では,大きく2つの実験を予定していた.1つは,筋収縮中の筋細胞内のpH動態の評価法を確立することである.この課題に対しては,筋収縮直後に単一筋線維レベルで評価できる観察方法を確立し,実験は予定通り進行したと考えられる. その一方,実施計画に示したもう1つの課題である「ミトコンドリアの局在を同定し,筋線維毎のミトコンドリア量(筋線維タイプの推定)とpH動態との関係を明らかにすること」については,現段階で実験条件のセットアップ中である.
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリアイメージングについては,以下の方法で実験することを予定している.ミトコンドリア特異的蛍光染色によって,筋線維毎のミトコンドリア局在を明らかにする.ミトコンドリアは筋線維タイプを推定するための重要な形態情報である.蛍光指示薬は,Mito TrackerあるいはMito Redなどを用いる.本研究では筋線維内のミトコンドリア観察に最適な負荷方法(濃度,負荷時間など)を検討し,また,pHイメージングとの同時観察が可能かどうか検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
バイオイメージングのための実験機材は昨年度までにセットアップを完了した.そこで,平成24年度はミトコンドリアイメージングに必要な蛍光試薬の購入を中心に研究費を使用する予定である.
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