研究概要 |
筋芽由来の培養細胞であるC2C12細胞に対する大気圧マイクロ波放電プラズマ照射の影響を検討した。10%ウシ胎児血清(FBS)を含む培養液中でC2C12細胞を培養し、実験に供した。異なるガス流量、電力、処理時間でプラズマ照射を行い、30分後に細胞を回収し、細胞ストレスの指標となるExtracellular-regulated kinase (ERK) 1/2およびc-jun N-terminal kinase (JNK)のリン酸化をWestern blot法で解析した。プラズマ発生に用いるアルゴンガスの流量を1 slm (standard liter/min)と4 slm で検討したが流量による差は認められなかった。一方、プラズマ発生時の電力は、10, 30, 70 90 Wと大きいほど、ERKおよびJNKのリン酸化は高まった。照射時間は1分間ではリン酸化の誘導が低く、3分間以上が必要であることが認められた。プラズマ照射の影響が培地成分を介しているか否かを検討するため、プラズマ照射(30 W, 5 min)後の培養液を非照射細胞の培養液と交換したが、ERKおよびJNKのリン酸化は照射細胞でのみ確認された。したがって、プラズマ照射は直接細胞に影響を及ぼしていると考えられた。細胞の分化や増殖には一酸化窒素(NO)が関与しているとの報告がある。そこで、プラズマ照射30分前にNO合成酵素阻害剤L-NAME(N-Nitro-L-arginine methyl-ester)を加え照射(30 W, 5 min)を行った。その結果、L-NAMEは濃度依存的にプラズマ照射によるJNKのリン酸化を抑制した。以上の結果より、大気圧マイクロ波放電プラズマは、筋芽細胞に直接作用し、NO生成を介してERKおよびJNKのリン酸化を高めることが明らかとなった。
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