大気圧プラズマ照射が筋芽由来の培養細胞であるC2C12細胞の増殖および分化に及ぼす影響について検討した。大気圧放電プラズマは、アルミ製円筒電極に2.45 GHzのマイクロ波を加え、円筒内にアルゴンガスを流して発生させた。C2C12細胞に大気圧プラズマを一日一回1分間照射すると、2日後の細胞増殖は有意に低下し、コントロール細胞の50%以下となった。一方、分化誘導培地で培養中のC2C12細胞に3日間にわたって大気圧プラズマを一日一回1分間照射しても、細胞分化の指標となるMyogeninおよびミオシン重鎖の発現量にはプラズマ照射の影響は認められなかった。細胞ストレスの指標となるExtracellular-regulated kinase (ERK) 1/2およびc-jun N-terminal kinase (JNK)のリン酸化をWestern blot法で解析したところ、プラズマ照射30分後にはERKおよびJNKのリン酸化は高まったが、照射4時間後には大きく減弱し、それぞれコントロールの14%と23%となり、24時間後にはコントロールレベルまで回復した。さらに、フローサイトメトリーによって細胞周期を解析したところ、プラズマ照射を行った細胞では、G0/G1およびS期の細胞の割合が有意に低下し、G2/M期の細胞の割合が有意に上昇した。以上の結果より、一日一回一分間の大気圧マイクロ波放電プラズマ照射は、C2C12細胞の分化には影響しないが、その増殖を強く抑制することが明らかとなった。その原因として、プラズマ照射はERKおよびJNKのリン酸化を一時的に高めるが、その後リン酸化レベルを低下させることによって細胞周期に影響を及ぼし、特に細胞の分裂を阻害することが示唆された。
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