運動中の筋内の代謝動態は、筋肥大や筋疲労を促すシグナルとなる。ヒト骨格筋内の代謝動態の計測方法として部位別多周波生体電気インピーダンス分光(S-BIS)法の適応可能性を探ることを目的とした。具体的には、筋内の代謝動態が変化する際の浸透圧変化やグリコーゲン分解による水の放出などの筋細胞内の水の動態に着目し、筋細胞膜のコンデンサーとしての電気的な性質を利用し、筋細胞内水分量を非侵襲的に測定することの応用可能性を明らかにすることである。まず、実験1として、漸増負荷等尺性力発揮運動においてS-BIS装置で測定した筋細胞内外液の変化と、近赤外線分光法・筋電図等によって計測した骨格筋の特性との関係を求めた。組織中の酸素化ヘモグロビン量が急激に減少する点で細胞内液(ICW)が急増し、また細胞外液(ECW)が減少し始めていた。その他の未公表のデータを踏まえると、これは糖代謝が著しく増加した可能性を示唆する結果であった。さらに実験2として自転車運動中、および前後の筋細胞内外液変化を評価した。その結果、運動強度の増加に伴って変化するシグナル、および運動後の筋内PHの変化過程を捉えていると考えられる電気特性変化を抽出することができた。これらの実験から、運動中の筋内の代謝動態を捉えることができる可能性が明らかになった。
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