研究概要 |
プライマリケアで問題となっている機能性身体症状患者の健康関連QOL低下が、漢方治療によって改善することを確認し、その影響因子について検討した。機能性身体症状を主訴とする患者645例(男性97例,女性548例、年齢52.1±14.7歳)を対象に、SF-36の日常役割機能(身体)標準化スコア(RPスコア)の変化を後ろ向きに評価した結果、漢方治療前28.4±9.6から3か月後36.0±12.6に有意に改善していた。RPスコアを従属変数とし、漢方医学的な気血水病態(気虚・気鬱・気逆・血虚・〓血・水滞)の有無と性別を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った結果、気虚(オッズ比:2.94、95%信頼区間:2.03~4.27)と気鬱(2.54、1.79~3.59)と性別(女性)(1.67、1.04~2.69)が日常役割機能(身体)の障害に影響する要因であることが示された。 次に、機能性身体症状を主訴とする患者86例(男性12例,女性74例、年齢53.2±14.7歳)を対象に、漢方治療前と1年後における健康状態の変化(5段階評価)と、PHQ-15(機能性身体症状の重症度評価尺度)スコアの変化、K-6(精神的ストレス状態評価尺度)スコアの変化を前向きに検討した。健康状態は初診時と比較してはるかに良い31例、やや良い44例、ほぼ同じ10例、良くない1例、はるかに悪い0例で、PHQ-15スコアは7.9±4.8から6.1±4.0に有意に改善し、K-6スコアは5.0±4.3から3.9±4.0に有意に改善した。漢方治療には身体症状と精神症状を同時に改善する効果があることが示された。 また、漢方医学独自の病態(虚証・実証・寒証・熱証)を自覚症状(気血水の病態に関連する問診項目)から自動判定するアルゴリズムのプロトタイプを機械学習によって開発した。今後、SF-36、PHQ-15、K-6の問診項目を組み込むことによって、心身一如・健康生成の漢方治療のノウハウをわかりやすく情報発信する計画である。
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