本研究では外部刺激に対する血圧・心拍の制御応答を高精度で抽出する手法を提案・構築した.提案手法においては,はじめに刺激応答に関連しない通常時の時系列から呼吸性の変動波形を抽出する.その後,刺激応答の波形から呼吸性の変動成分を除き,時間軸に再変換することで,刺激に起因する影響をう時間軸で抽出するものである. 嚥下をテスト刺激として用いて実験を行った結果,今回提案したアルゴリズムにおいて,刺激のない時間帯の心拍・血圧応答波形が平坦になり,また刺激時においてはその反応を顕著に抽出することを確認した.この結果から,提案手法は呼吸性および血圧性の周期変動に埋もれていた刺激応答を抽出できることが示された. さらに,立ちくらみなどの対策,予防に向けた基礎的検討として,突発的な姿勢変化に提案手法を適用し,起立時の血圧変化から呼吸性の変動を分離して評価を行った.その結果,姿勢変化に対して収縮期血圧と拡張期血圧は必ずしも同じ傾向の反応を示さないという結果が得られた.また,本手法で明らかになった循環器反応を用いてひやりはっとの検出への応用を試み,他の交感神経活動に起因する指標と併用することで検出精度が向上するという知見が得られた. 以上のように,外部刺激に対する循環器応答の抽出手法を構築・実装し,姿勢変化に対する循環器制御メカニズムの評価,およびひやりはっとの検出といった具体的な評価によって提案手法の有効性を示すことができた.
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