研究者らは、人間の可聴域上限をこえ複雑に変化する超高周波成分を豊富に含んだ音が、生命活動の恒常性や免疫機能に関わる脳の最上位中枢をなす間脳、中脳からなる<基幹脳>を活性化し、心身機能の向上を導く効果<ハイパーソニック・エフェクト>を発見した。本研究は、ハイパーソニック・エフェクトによる、特にストレスなどの環境情報要因に起因した現代病に対する予防医療への可能性を、実験動物を使って検討することを目的とした。 生育年齢を統制した健常なマウスを3群に分け飼育した。第一群は実験動物飼育室の環境音下で、第二群は、熱帯雨林の環境音から超高周波成分のみを除いた環境音下で、第三群は、ハイパーソニック(超高周波成分を含む空気振動)をふんだんに含む環境音下で飼育し、発育状態、行動状態、ストレス指標、疾病発症率、寿命などを比較検討することを試みた。 マウス飼育用に開発したハイパーソニック印加装置を導入し、音環境を統制して飼育できるケージを独自に開発して製作した。また印加する環境音コンテンツも検討し製作した。さらに小型ビデオカメラによる複数ケージ同時監視記録装置とケージ単位のマウスの行動量測定のプログラムを開発し、飼育条件ごとの比較検討が可能な実験系を確立した。 実験系を確立するために時間を要したため、マウスの飼育年数は約1年となった。ハイパーソニックを環境音として、常時印加することの安全性について1年間においては何ら問題がないことが確認された。また、異なる3つの環境音条件下において、条件によるマウスの行動量の違いが見出された。飼育年数が、短いために疾病予防効果を客観的指標で明らかにすることは、本研究終了時までにできなかったが、第一群のマウスの死亡率が高い傾向が見出され、ハイパーソニックの疾病予防の可能性と寿命へのプラスの影響が示唆された。今後も疾病予防効果について、継続して評価する。
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